実習記録の書き方

実習記録って、
そもそも何?

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実習記録って、何のためにあるの?

「実習って記録が大変で憂鬱」「患者さんと話している時は楽しいけど記録を前にすると何から書けばいいのかわからない」。実習を経験した皆さんなら誰もがうなずくのではないでしょうか? 逆に、実習が進むにつれ「記録の書き方がわかって実習が楽しくなってきた」という声も多く耳にします。そう、実習記録が書けるようになると気持ちにも変化があり、それまでの何倍も実習が楽しくなるようです。

実習記録について触れる前に看護記録について少しだけお話しておきましょう。みなさんが看護師として働き始めると、看護記録との長いお付き合いが始まりますが、では一体「看護記録」とはどういうものなのでしょうか? 日本看護協会は「看護記録とは看護実践の過程を記述したものであり、それらは看護職者の思考と行為を示すものである」と定義しています。また、看護記録の機能として以下の3つを挙げています。

  1. 看護の実践を明示する。
  2. 患者に提供するケアの根拠となる。
  3. 医療者間および患者・医療者間の情報交換のための手段となる。

看護学生が書く実習記録もこれに準じたものと考えると、実習中の看護実践の軌跡を示し、学生の思考と行為を明らかにするために実習記録があることがわかります。将来看護記録を書くための下準備ともいえます。みなさんが実習中にメモ帳や脳みそにインプットした溢れんばかりの情報を記録用紙を使って整理整頓し、看護過程という形でアウトプットするのです。

実習記録が書けるようになると

記録は大事とわかっていても、実際に膨大な枚数の実習記録を前にすると「こんなに書く必要があるの?」と嘆きたくもなりますよね。実習中、記録に対してネガティブになる学生は少なくありません。しかし、実習は「書く」という作業なしには絶対に成長しません。先生だって理由もなしにたくさんの記録用紙を作っているわけではないのです。

では書くことでどんなメリットがあるのでしょうか? 次の3つを挙げてみました。

メリット1

1.自分の思考を言葉で整理・表現できる

患者さんやカルテから得られた膨大な情報を頭の中でうまく整理することは難しい作業です。それらをデータベースを用いて順を追って整理していくと考えがまとまりやすくなります。データベースをしっかりまとめないと次に進めないとも言えます。

メリット2

2.看護過程の展開がスムーズになる

上記の1を行なうことで、今患者さんにどんなことが必要なのか、看護問題が導けるようになります。

メリット3

3.指導者や教員とのやりとりを通して成長を確認できる

実習記録は毎日指導者や教員が内容を確認しコメントをしています。不足していたところ、良い視点を持てたところなど、どんなコメントがあるのか必ず確認し、それに対する返答を書くことで記録のレベルは日々上がっていきます。記録を修正・追加できるのは学生だからこその特権です。それを活かして修正されることを怖がらず、間違ってもいいから書いてみることも大切です。実習の最初と最後を比べてみると自分の成長に気づくのではないでしょうか。

事例演習等の授業で扱った紙上患者さんとは異なり、実習では今を生きている生身の患者さんを相手に看護過程を実践していきます。そのため患者さんの日々の変化に追い付いていくことに必死になる場面も多いと思います。しかし、実習は1人の患者さんと向き合い「情報収集→アセスメント→看護診断→看護計画立案→実施・評価→修正→実施・評価…」という一連の看護の過程を経験できる非常に貴重な機会です。それによってみなさんの問題解決能力は間違いなく上昇していくのです。
この機会に実習記録をマスターしてより充実した実習を目指していきましょう。

アセスメントとは

アセスメントとは「S」情報・「O」情報から得られた内容を分析・解釈し「評価」することを言います。それによって対象者の看護の方向性を検討したり、実践した看護を振り返ったりすることで、さらなる質の向上を目指すことが可能となります。たとえば、「こんなに悪くなるなんて思っていなかったよ」というS情報(主観的データ)と、2型糖尿病・入院時空腹時血糖358・HbA1c13.5%・BMI31、49歳会社員、妻と子供1人の3人暮らし、という「O」情報(客観的データ)をもとに評価することが求められます。病態だけでなく、対象者の価値観や環境も含めてアセスメントを進めていくことが大切です。

次回から具体的な書き方のポイントを解説していきます。

書き方のポイント~ゴードン編~

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プロフィール

高山真由子(看護師・保健師・看護ジャーナリスト)

看護短大・大学編入学を経て、早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了(ジャーナリズム修士)。病院、在宅、行政・学校・産業保健、教育機関、イベント救護など、幅広い臨床経験を持つ。並行して看護ライターとしての活動も広げ、ダンス留学、自転車ロードレース選手生活も経験。現在は医療系web編集者として、メディアの立場から看護の発展にたずさわる1児の母。

高山真由子(看護師・保健師・看護ジャーナリスト)

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