地域住民の保健指導や健康を支える保健師の働き方とは

行政で働く保健師に注目

横浜市都筑区福祉保健センターで活躍する原田こころさん(こども家庭支援課 こども家庭支援担当)にお話を伺いました。

地域の健康を守りたいという思いから保健師の道へ

私の母も祖母も看護師で、さらに保健室の先生へのあこがれから、高校卒業後の進路は迷わず看護学部を選びました。看護師として現場に立つ魅力も感じていたのですが、大学時代に気になり始めたのは「病院の外」のこと。街中にいる高齢者を見て、「この方たちはちゃんと医療サービスを受けられているのかな?」「幸せな老後を過ごせているのかな?」と感じたことが心に残り、広く地域の健康を守る保健師という仕事に興味を持つようになりました。

私の大学では希望する全員が保健師の専攻課程を受けられたので、約200人いた同級生のうち半数近くが保健師国家試験を受験し、資格を取得していました。しかし、実際に保健師として就職したのは私を含めて5人程度だったと記憶しています。ダブル受験のプレッシャーは強く、勉強は大変でしたが、仲間と励まし合いながら乗り切りました。

私の場合は、より保健師として関わることができる対象者が多いという理由で、行政職に絞って就職活動を行いました。地元である長野県と横浜市の試験日が重なってしまい、最後まで悩みましたが、業務の幅広さや研修の充実度なども考慮して横浜市を選択。1次試験の筆記試験と小論文、2次試験の面接を通過して、無事に合格することができました。

同期として入庁した保健師は約30人でした。公務員としての共通研修のほか、保健師としての研修、さらに担当する分野に特化した研修などが、入庁してからの1年間で数多くありました。2年目となる現在も研修の案内は頻繁にあり、学び続けるための環境が整っていると感じますね。

配属先の希望は面接時に聞かれますが、必ずしもその通りになるわけではありません。また、横浜市では、おおむね10年間の間に3回程度の異動が目安とされています。区福祉保健センターには私が現在配属されている「こども家庭支援課」のほか「高齢・障害支援課」や「福祉保健課」がありますし、本庁勤務となればより大きな行政施策に携わることもできます。できるだけ若いうちから様々な現場で経験を積み、行政としてできるサービスの全体像を理解していくことが必要ですね。

現場もデスクワークも!多様な行政保健師の業務

私が働いているこども家庭支援課において、最も大切な業務の一つが家庭訪問です。都筑区のこども家庭支援課では、地域を7人の保健師で分担しています。訪問の対象は0~18才の子どもとその家族で、中でも乳幼児の訪問が多いです。相談を受けて訪問することもあれば、病院から連絡が入り、ご本人に連絡して自宅を訪ねることもあります。

基本的には1人での訪問になりますが、必要に応じて、同じ課の社会福祉職とペアを組んで一緒に訪問することもあります。私の担当地域はバスの運行本数が少ないため、片道30分くらいかけて電動自転車で移動することが多いですね。街の様子を見ながら自転車を走らせることで、「坂道が多くて大変だな」「この周辺にはお店が少ないみたい」など、地域の実情を知ることができると感じています。

訪問時の持ち物は、赤ちゃんの身体を測定するためのデジタル体重計やメジャー、認知機能の発達を確認するための絵本やおもちゃなど。お母さんへどのような保健指導をするかは訪問してみないと分かりませんから、イベントや相談会のチラシなども基本的には全種類持ち歩いています。必要なアイテムが足りなかったということのないように、リュックも自転車のカゴもパンパンにしながらの訪問ですね。

このような個別支援に加えて、年間を通して担当する事業というものがあり、その進行を管理することも重要です。私の場合、2018年度は「外遊び事業」など複数の事業を担当しており、それぞれで講演会の運営・開催やチラシの作成などを行っています。そのほかにも、月に6回ある乳幼児健診に従事したり、地域の人と協力し合いながらイベントを開催したりと、業務は幅広くあります。

これまでの業務で特に印象に残っているのは、自分の担当地域で「地域子育てマップ」を発行したこと。地元のお母さんたちのニーズを吸い上げ、地域子育て支援センターや主任児童委員、民生委員などと協力しながら9か月ほどかけて完成させた力作でした。行政職のイメージというと、日々ひたすらルーチンの業務をこなしているように思われるかもしれませんが、1日中出ずっぱりということもあれば、ひたすらデスクで電話している日もあり、様々な彩りに満ちているのです。

新卒に限定されない多様な背景を持つ保健師が活躍

各地域で毎月開催される赤ちゃん会(0歳児地域育児教室)では保健師が手遊びをしており、入庁したてのころに驚いた記憶があります。0歳児のお母さんたちは、赤ちゃんに対してどう関わったらよいか悩んでいることが多いので、支援の一環として簡単な手遊びを紹介するのです。初めのうちは大勢の前で歌うことにドギマギしましたが、動画サイトなどを見ながら練習を重ねた結果、今では楽しみながらできるようになりました。赤ちゃん会では、最初は抱っこもぎこちなく緊張していたお母さんたちが、やがて穏やかで自信のある表情に変化していく様子を見ることができます。地域のお母さんと赤ちゃん、両方の成長を長期にわたり見守ることができるのは、行政保健師として大きな喜びです。

行政保健師として求められる資質の一つは、優先順位を付けて効率的に動くことができる能力だと思います。定期的に実施する乳幼児健診や、年間を通して運営する事業を滞りなく進行させることはもちろん、児童虐待や育児不安などの対応には随時スピーディーな支援が必要になるので、多くのタスクを自らマネジメントしていく意識が必要です。

また、家庭訪問は単独で行うことが多いので、一人の保健師としてしっかりと情報収集できているか、相手の気持ちを聞き取れているかどうかが支援の質へダイレクトに影響します。病院での看護業務と異なり、自分の勤務が終わったら次の担当者へ引き継ぐというわけにもいかないので、「今日訪問したあのお母さん、今ごろ大丈夫かな」と心配になって夢に出てくることもあります。まだまだ先輩方のサポートを受けながらですが、訪問先のご家庭から信頼してもらって一緒に解決法を考えていくことが行政保健師の職務の難しさでもあり、大きなやりがいを感じられる部分でもあると思います。

公務員というと新卒で入庁するイメージが強いかもしれませんが、横浜市は受験資格が36歳まで(保健師の場合)ということもあり、看護師として臨床経験を積んでから入庁する人も少なくありません。出産後に行政保健師となった人も多いですし、なかには「若いころは海外を放浪していました」という人もいます。多様な背景を持つ職員を受け入れてくれる職場ですから、最初は別のキャリアを積んでから、そこで得られた知識や経験を生かして行政保健師として活躍する道もあるのです。看護学生の皆さんが将来のキャリアを考えるときは、幅広く地域に貢献できる行政保健師を選択肢の一つとして見ていただきたいですね。

横浜市都筑福祉保健センター こども家庭支援課

「子育て事務係」「こども家庭支援担当」「保育運営担当」「青少年支援・学校地域連携担当」の4つの部署に分かれ、地域のニーズに対応。子どもたちが育つ家庭背景や地域環境にまで目を配り、よりよい子育てができるよう幅広い支援活動を行っている。