看護師国家試験攻略法

第113回
看護師国家試験の
振り返り

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2024年2月11日(日)、第113回看護師国家試験が実施されました。
厚生労働省から合格基準や合格率などが公表された今、
第113回試験がどのようなものだったのか振り返り、
次回の試験対策に生かせるポイントを探っていきたいと思います。
(監修:ナース・ライセンススクールWAGON 講師代表・髙栁真里子)

第113回試験の合格率と合格基準は?

試験終了直後から、X(旧Twitter)などで「難しかった」という声が続出した第113回試験。合格発表を待つ間、受験生はハラハラしていたのではないでしょうか。

今回の受験者数は6万3301人(うち新卒者5万7860人)で、合格率は87.8%(うち新卒者は93.2%)でした。例年90±2%の範囲で推移していた傾向を大きく下回り、ここ数年で最も低い合格率となりました。

看護師国家試験に挑む看護学生

第113回 看護師国家試験 合格状況

受験者数
(人)
合格者数
(人)
合格率
(%)
全体 63,301 55,557 87.8
新卒者 57,860 53,903 93.2

過去5年の看護師国家試験合格率推移

過去5年の看護師国家試験合格率推移のグラフ

※参照:厚生労働省「第110回保健師国家試験、第107回助産師国家試験及び第113回看護師国家試験の合格発表

今回の試験問題を分析した髙栁先生によると、一般問題や状況設定問題の難易度は例年に比べて変わらないものの、必修問題は難易度が高かったそうです。必修問題が難化した理由としては、想定外の内容が出題されたこと、はるか昔に一般問題だったものが久しぶりに必修問題として出題されたこともあり、丸暗記では太刀打ちできないような考えさせられる問題が多かったと指摘しました。

第113回試験の合格基準は以下の通りです。

必修問題及び一般問題を1問1点、状況設定問題を1問2点とし、次の(1)~(2)の全てを満たす者を合格とする。

(1)必修問題……40点以上/49点

(2)一般問題/状況設定問題……158点以上/250点

なお、第113回試験では、採点除外等の取り扱いをした問題が必修問題で6問ありました。これは異例のことだといえるでしょう。

・午前問題5・23・25、午後問題2・11(問題として適切であるが、必修問題としては妥当でないため)
→正解した受験者については採点対象に含め、不正解の受験者については採点対象から除外されました。

・午後問題21(設問が不十分で正解が得られないため)
→採点対象から除外されました。

必修・一般・状況設定問題の出題傾向は?

【必修問題】基礎中心ながら難易度の高い問題も目立った

全体的には従来から頻出の分野が中心の出題となりました。基本的な内容を聞く問題が中心だったので、ケアレスミスなく解答していれば合格基準の8割を達成することはできたと思います。一方で、過去に出題例がないテーマの問題が5問(例年は2~4問)あったことを含め、幅広い理解力が試されるような難易度の高い問題も見受けられました。

午前 問題4:介護保険法の地域支援事業で正しいのはどれか。

1.保険給付である。
2.都道府県の事業である。
3.介護保険施設で実施される。
4.配食サービスは生活支援サービスの1つである。

正解:「4」

その一例が上記の問題で、地域支援事業に関するものは今回が初めてでした。人口高齢化に伴う医療供給の逼迫を解決するため、地域医療や予防医療が推進されていることが背景にあるのでしょう。このテーマに関連する出題は、今後も繰り返される可能性が高いと思われます。

【一般問題】災害に関わる問題が例年より多かった

基本的には例年通りの出題だったので、頻出分野を中心に学習していれば迷わず解答できたかと思います。あえて今回の特徴を挙げるとすれば、災害に関わる問題が例年より多かったとはいえるでしょう。一般問題は出題範囲が広い上、五肢択二の問題もあります。苦手意識を持つ人が多い疾患、病態、関係法規などを含め、どの角度から問われても対応できるようにしておきましょう。学習内容が多過ぎるからとキーワードだけで覚えていると、試験本番でつまずくこともあるので要注意です。

午前 問題77:小脳の機能はどれか。

1.睡眠と覚醒
2.姿勢反射の中枢
3.振動感覚の中継
4.随意運動の制御
5.下行性の疼痛抑制

正解:「4」

上記の問題は、「小脳=姿勢反射と随意運動」というキーワードのみで覚えていると「2」を選択してしまうかもしれません。しかし、小脳が司るのは姿勢反射の「調節」で、姿勢反射の中枢を担うのは中脳です。このように、部分的な知識だけを頭に詰め込んだ状態では落とし穴にはまる可能性があります。

【状況設定問題】例年通りだが状況設定が細かい

出題傾向は例年と大きく変わらず、典型的な疾患や患者の状況を取り上げた問題が多くみられました。近年、状況設定が細かくなる傾向にあり、今回もその流れにありますが、基本的な病態や検査データについてきちんと理解していれば正答にたどり着けるでしょう。

午前 問題92:Aさん(49歳、女性)は、これまで在宅勤務でほとんど外出することがなく、BMI 33であった。Aさんは久しぶりの出勤の際に転倒し、右大腿骨頸部骨折(femoral neck fracture)と診断され、右人工股関節置換術を受けることになった。

術後1日、Aさんは39.1℃の発熱がみられた。

バイタルサイン:呼吸数18/分、脈拍117/分、整、血圧132/82mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度<SpO2>97%(room air)。
身体所見:呼吸音は異常なし、腰背部痛なし、術創部の腫脹、発赤、熱感はない。左手の末梢血管内カテーテル刺入部に発赤、熱感がある。
血液検査所見:赤血球344万/μL、Hb 12.1g/dL、白血球11,900/μL、血小板18万/μL。
血液生化学所見:尿素窒素16mg/dL、クレアチニン 0.8mg/dL、CRP 11.4mg/dL。
尿所見:沈渣に白血球を認めない。
胸部エックス線写真:異常所見なし。

Aさんの発熱の原因で考えられるのはどれか。2つ選べ。

1.肺炎(pneumonia)
2.腎盂腎炎(pyelonephritis)
3.術創部感染
4.術後の吸収熱
5.カテーテル関連血流感染症(catheter related bloodstream infection)

正解:「4、5」

上記の問題は、一つひとつの選択肢と所見を丁寧に照らし合わせていけば決して難しいものではありません。具体的に見ていくと、呼吸と胸部X線写真が異常なし、血液検査から腎機能は問題なし、術創部の所見から術創部の感染は否定的と判断できるので、選択肢1~3は除外できます。問題演習を重ねる中で、与えられた情報から必要なものを迅速に拾い上げ、正答につなげる力を養っていきましょう。

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