看護師国家試験攻略法

第110回
看護師国家試験の
振り返り

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2021年2月14日(日)、第110回看護師国家試験が実施されました。
出題傾向や難易度にどのような変化がみられ、合格ボーダーラインはどうなったのでしょうか。
第110回試験を振り返り、そこから次回試験の対策に生かせるポイントを探っていきましょう。
(監修:ナース・ライセンススクールWAGON 講師代表・髙栁真里子)

難易度は前回同程度か、やや低下

第110回試験を分析したナース・ライセンススクールWAGONの髙栁真里子先生によれば、今回の試験の難易度は前回と同程度かやや低下、出題傾向にも大きな変化はみられませんでした。いわゆる不適切問題も2問と少なく(もちろん、ゼロであることが望ましいことは言うまでもありませんが)、過去問をベースにしっかりと学習を積み上げてきた受験生にとっては、比較的取り組みやすい内容だったといえます。ただし、2022年度から新しい看護基礎教育が開始される見通しとなっていることを受けて、今回の出題にも若干の影響がみられました。その具体的な内容をチェックしていきましょう。

1.形態機能学や疾病の成り立ちに関する出題が増加

2022年度から開始予定の看護基礎教育の見直しは、厚生労働省の看護基礎教育検討会で議論されてきたもの。専門基礎分野の「人体の構造と機能」「疾病の成り立ちと回復の促進」が1単位増となり、現場で求められる基礎力の強化が重視されている点は注目です。

「専門基礎分野」の「人体の構造と機能」及び「疾病の成り立ちと回復の促進」については、解剖生理学や薬理学等を充実させ、臨床判断能力の基盤を強化するための講義・演習の充実を図る必要があることから、3年課程では現行の15単位から1単位増の16単位とした。

※厚生労働省「看護基礎教育検討会報告書」(令和元年10月15日)より引用

こうした動きを踏まえて、第108回試験より「人体の構造と機能」「疾病の成り立ちと回復の促進」からの出題が増加しており、この流れは第110回試験でも続きました。正答率が低くなり試験の難易度に直結する五肢択一・五肢択二の問題も、「人体の構造と機能」「疾病の成り立ちと回復の促進」から多く出題されています。具体的には、23問あった五肢択一のうち13問、20問あった五肢択二のうち10問が該当し、かなりの割合を占めていることが分かります。五肢問題では正答にたどり着くまでにより正確な知識が求められるため、この分野を重点的に学んでいた受験生が得点しやすい試験だったといえるでしょう。

看護師国家試験に挑む看護学生

2.知識を結び付けて実践につなげる力が問われている

看護師国試は勉強すべき範囲が広いため、ともすれば暗記に頼って乗り切ろうとしがちになります。しかし、それで臨床に出てから患者さんのアセスメントなどができるかというと、心許ないと言わざるを得ないでしょう。知識を「点」として覚えるだけでなく、それらを有機的に結び付けて「線」として理解するような学習が必須だといえます。実際、今回も暗記だけでは対応しづらい出題がなされています。その一例が次の問題です。

午前 問題74:血液中のビリルビンの由来はどれか。

  1. 核 酸
  2. メラニン
  3. アルブミン
  4. グリコゲン
  5. ヘモグロビン

この問題は、ヘムが分解されてビリルビン(不溶性の老廃物)とその他の胆汁色素が生成され、そのビリルビンは血漿輸送→肝臓への取り込み→抱合を経て胆汁排泄されるという一連のビリルビン代謝のことを理解していれば、比較的容易に解答できます(正解=5)。しかし、知識を細切れにして暗記している受験生にとっては「目新しい問題」と感じられ、正解にたどり着くことは難しかったのではないでしょうか。

3.多職種連携に対する意識が問われている

チーム医療の重要性が叫ばれるようになって久しいですが、医療現場では多様な専門職が力を合わせて患者さんのために働いているわけで、看護師以外の専門職が何を考え、どう動いているのかを踏まえておくことは、円滑で質の高い看護業務のためにも大切なことです。そうした意識を問う出題がなされていることも、ここ最近の流れの一つだといえるでしょう。例えば、次の問題です。

午前 問題89:Aさん(38歳、女性)は、大腸癌の終末期である。癌性腹膜炎による症状緩和の目的で入院し、鎮痛薬の静脈内注射と高カロリー輸液が開始された。Aさんは自宅で過ごしたいと希望したため、医師と看護師で検討し、症状緩和をしながら自宅退院の方向で退院支援カンファレンスを開催することになった。
退院支援カンファレンスの参加者で適切なのはどれか。2つ選べ。

  1. 薬剤師
  2. 言語聴覚士
  3. 臨床検査技師
  4. 介護支援専門員
  5. ソーシャルワーカー

大腸癌の終末期である38歳の女性に関する退院支援カンファレンスで、どの専門職が参加するとサポートに役立つかという問題ですが、「介護支援専門員」(ケアマネジャー)を選択した受験生も少なからずいたようです。

在宅での緩和ケアということで介護支援専門員が連想されたのだと思いますが、この場合の適切な参加者は「薬剤師」と「ソーシャルワーカー」になります(正解=1、5)。「鎮痛薬の静脈内注射と高カロリー輸液」を行っていることで薬剤師が、経済的な部分を含めた総合的な相談に乗るためにソーシャルワーカーが、それぞれ必要になるからです。

Aさんは38歳なので、介護保険の対象にはならず、医療保険による訪問看護を受けることになるため、介護支援専門員は選べません。看護師以外の専門職に関する知識と保険制度に関する知識を総合して正解を導き出すことを求める、なかなかの良問だったといえるでしょう。

4.コロナ禍での受験、お疲れ様でした!

試験の内容とは関係ありませんが、今回はコロナ禍において実施された試験だったという点は特筆すべきで、受験生は体調管理などに神経をとがらせたことでしょう。試験の質の維持や会場確保が難しいといった理由から、COVID-19に罹患してしまった受験生に対しても追試の設定はありませんでした。会場入り口での検温や検査により受験できなくなる可能性もあり、受験生は最後の最後まで不安だったのではないでしょうか。

また、受験者間の間隔を1m以上確保するというルールが設けられたことで、例年に比べて会場が分散され、地域によってはかなり遠い場所を指定されることもあったようです。また、試験中に換気のため窓を開放する必要もあり、かなりの寒さを感じる受験生もいたようです。間違いなく、例年以上に平常心を保つことが難しい一日となりました。

第110回のボーダーラインはどうだった?

第110回試験の合格率は90.4%(うち新卒者は95.4%)で、第109回試験の89.2%から微増となりました。合格ボーダーラインは以下の通りです。

必修問題及び一般問題を1問1点、状況設定問題を1問2点とし、次の(1)~(2)の全てを満たす者を合格とする。

(1)必修問題…40点以上/50点

(2)一般問題/状況設定問題…159点以上/250点

第110回試験では、いわゆる不適切問題が2問ありました(いずれも、複数の正解があったため、複数の選択肢を正解として採点)。必修問題および一般問題・状況設定問題の合格ボーダーラインの得点率はいずれも例年並みの水準であり、一定の水準に達した受験生を合格させる国家試験として安定的な機能を果たしているといえるでしょう。

第110回 看護師国家試験 合格状況

受験者数
(人)
合格者数
(人)
合格率
(%)
全体 66,124 59,769 90.4
新卒者 59,593 56,868 95.4

過去5年の看護師国家試験合格率推移

過去5年の看護師国家試験合格率推移のグラフ

※参照:厚生労働省「第107回保健師国家試験、第104回助産師国家試験及び第110回看護師国家試験の合格発表

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