看護師国家試験攻略法

第112回
看護師国家試験の
振り返り

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2023年2月12日(日)、第112回看護師国家試験が実施されました。
厚生労働省から合格ボーダーラインや合格率などが公表された今、
第112回試験がどのようなものだったのか振り返り、
次回の試験対策に生かせるポイントを探っていきたいと思います。
(監修:ナース・ライセンススクールWAGON 講師代表・髙栁真里子)

第112回試験の出題傾向や特徴は?

第112回試験は、新しい出題基準「保健師助産師看護師国家試験出題基準 令和5年版」に基づいた初の看護師国試となりました。今回の試験を分析した高栁先生によれば、「在宅看護論/地域・在宅看護論」に関する出題が目立ったそうです。地域のさまざま場面における看護を実践的な部分まで押さえておく必要があったといえます。

出題方式に目を向けると、五肢問題の出題数が前回の35問から41問に増加しました。必修問題でも五肢択一問題が2問出題され(前回・前々回は1問だけ)、ドキッとした受験生もいたかもしれません。とはいえ、必修問題全体の難易度は例年と同程度。しかし、一般問題や状況設定問題を加味すれば、前回比でやや難易度が上がった印象があるということです。

それでは、より具体的な出題傾向と特徴を、実際の問題に即してみていきましょう。

看護師国家試験に挑む看護学生

【必修問題】「目標III」にまつわる問題が増加傾向!

新出題基準の中項目「感染防止対策」に関する問題が多く、必修問題として4問も出題されました。コロナ禍の情勢を反映したものでしょうが、今後もこの傾向は続く可能性があり、特に小項目「必要な防護用具(手袋、マスク、ガウン、ゴーグル)の選択・着脱」は要注意です。

全体の問題構成をみると、第111回試験よりも目標IIIに該当する問題が増えています。すなわち、「解剖生理学」「病理病態学」「薬理学」の領域が苦手な受験生にとっては厳しい試験になったかもしれません。

午前 問題14:糖尿病の急性合併症はどれか。

1.足壊疽
2.脳血管疾患
3.糖尿病網膜症
4.ケトアシドーシス昏睡

例えば、疾患については、急性期・慢性期の症状を区別できているかといった点も問われました。上記の問題では、「糖尿病」という言葉から、反射的に網膜症などの選択肢を選んでしまった受験生も少なくなかったようです。しかし、ここで問われているのは急性合併症であり、正解は「4.ケトアシドーシス昏睡」となります。学習した事項をぼんやりとしたイメージで頭に入れているだけでは、本番で足をすくわれるおそれがあると、この問題からも分かるのではないでしょうか。

【一般問題】新項目からの出題多数ながら、意外とシンプル

一般問題においても新出題基準の新たな項目から多く出題され、改訂の影響が感じられる試験となりました。一方で、旧出題基準とは表現が異なっているだけで、過去問演習を重ねていれば十分に対応できる内容も少なくなかったようです。順を追った思考プロセスが求められる問題もありましたが、全体としてはシンプルな問われ方の問題が多数を占めました。

午前 問題26:骨格筋の細胞膜には(  )に対する受容体がある。自己抗体がこの受容体の働きを阻害すると骨格筋は収縮できなくなる。
(  )に入る神経伝達物質として正しいのはどれか。

1.アセチルコリン
2.アドレナリン
3.ドパミン
4.ノルアドレナリン

上記の問題は運動神経の神経伝達物質がテーマであり、目新しいものではありません(正解は1)。過去問の解答を丸暗記するのではなく、「別の角度から出題されるかも?」と応用的な視点を持って取り組んでいたならば、無理なく対応できたでしょう。

【状況設定問題】検査データの理解が明暗を分ける問題も

状況設定問題は、配点が1問当たり2点と高いため、ぜひ多くの正解をつかみ取りたいところ。提示された状況を正しく把握した上で、検査データ、薬剤の副作用、看護師の対応などについて判断する問題が多く出題されました。

検査データが提示される状況設定問題の対策として重要なことは、主要なものの基準値(基準範囲)を覚えておくことでしょう。ある数値が示されたとき、まずは瞬時に正常か異常かを判別できる力、そして異常だった場合は患者の身に具体的に何が起こっているのかを考えられる力が求められます。

午前 問題94~96:Aさん(28歳、女性、美容師)はゴルフが趣味である。同居しているパートナーと1週前にゴルフに行った後から、顔面の紅斑、微熱、全身倦怠感および手肢の関節痛が現れた。病院を受診したところ、全身性エリテマトーデス〈SLE〉と診断され入院した。Aさんは看護師に「これまで病気をしたことがなかったので、驚いています」と話した。

バイタルサイン:体温37.4℃、呼吸数18/分、脈拍64/分、整、血圧110/60mmHg。
血液所見:赤血球260万/μL、Hb9.0g/dL、白血球7,600/μL、血小板18万/μL、尿素窒素16mg/dL、クレアチニン0.8mg/dL、CRP0.7mg/dL、直接Coombs〈クームス〉試験陽性。
尿所見:尿蛋白(-)、尿潜血(-)。
神経学的検査:異常所見なし。
12誘導心電図:異常所見なし。
胸部エックス線写真:異常所見なし。

問題94:Aさんに生じている可能性が高いのはどれか。

1.心膜炎
2.溶血性貧血
3.ループス腎炎
4.中枢神経ループス

上記の問題は、たとえ全身性エリテマトーデスという情報がなくても、検査データさえ正しく読むことができれば、逸脱している項目が特定できた問題です(正解は2)。実習でOデータ(客観的情報)をもとにアセスメントする習慣を身に付けていた受験生にとっては、答えやすい問題だったのではないでしょうか。

第112回試験のボーダーラインはどうだった?

第112回試験の受験者数は6万4051人(うち新卒者5万8911人)で、合格率は90.8%(うち新卒者は95.5%)でした。近年の合格率は90%±2%程度の範囲にあり、第111回試験の91.3%からは微減となっています。合格ボーダーラインは以下の通りです。

必修問題及び一般問題を1問1点、状況設定問題を1問2点とし、次の(1)~(2)の全てを満たす者を合格とする。

(1)必修問題……40点以上/50点

(2)一般問題/状況設定問題……152点以上/249点

なお、第112回試験では、採点除外等の取り扱いをした問題が一般問題で1問、状況設定問題で1問ありました。

・午後問題35(設問が不十分で正解が得られないため)
→採点対象から除外されました。

・午後問題95(設問が不明確で複数の選択肢が正しいと考えられるため)
→複数の選択肢を正解として採点されました。

第112回 看護師国家試験 合格状況

受験者数
(人)
合格者数
(人)
合格率
(%)
全体 64,051 58,152 90.8
新卒者 58,911 56,276 95.5

過去5年の看護師国家試験合格率推移

過去5年の看護師国家試験合格率推移のグラフ

※参照:厚生労働省「第109回保健師国家試験、第106回助産師国家試験及び第112回看護師国家試験の合格発表

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