助産師の人数は増えている?看護学生向けに人手不足の原因と将来性を解説

助産師の人数は増えている?看護学生向けに人手不足の原因と将来性を解説

助産師の人数は毎年少しずつ増えており、令和6年時点で全国に約3万8千人が活躍しています。一方、少子化や晩婚化の進行、ハイリスク妊産婦の増加などにより、現場で必要とされる専門性や配置の条件に合致する助産師の人手不足が続いています。

特に、地域によって偏りが大きく、離職率も長年ほぼ横ばいの状態です。本記事では、看護学生の方々に向けて、助産師の人数の推移や人手不足の背景、看護学生が知っておきたい助産師の将来性について解説します。

1.助産師の人数は毎年増加傾向にある

助産師は全国的に増加傾向が続いており、厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」からも、助産師の就業者数は過去10年間で増え続けていることがわかります。

助産師の役割は、妊婦期・分娩・産後の幅広いケアに加え、産後ケア事業や女性の健康支援など多様化しており、その需要の高まりが人数増加にも反映されているといえるでしょう。看護学生にとっても、資格取得後の職場選択の幅が広がっている状況と考えられます。

年次 助産師数
平成26年(2014年) 33,956人
平成28年(2016年) 35,774人
平成30年(2018年) 36,911人
令和2年(2020年) 37,940人
令和4年(2022年) 38,063人
令和6年(2024年) 38,721人

令和6年時点の助産師は全国で38,721人

厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」によれば、全国の就業助産師数は38,721人とされています。令和4年(2022年)から増加しているだけでなく、長年にわたって右肩上がりの傾向であることが確認できます。

このデータは、全国の病院・診療所・助産所・行政などに従事する助産師数を合算したもので、助産師資格保持者が幅広い分野で活躍している実態を示しています。

年次 助産師数
令和6年(2024年) 38,721人

10年間で約5,000人増加している

過去10年間の推移を見ると、平成26年(2014年)時点での全国の助産師数は33,956人、令和6年(2024年)には38,721人となっており、ここ10年間で約5,000人増加しています。

助産師の仕事に需要があるということに加え、助産師への就業を希望する人が増えていること、産後ケア事業の全国展開といった行政ニーズが高まっているのが増加傾向の一因といえるでしょう。

年次 助産師数
平成26年(2014年) 33,956人
令和6年(2024年) 38,721人

病院勤務の助産師が約6割

助産師の勤務先については、病院勤務が約6割(59.5%)を占めています。主に分娩を扱う病院や総合病院、周産期母子医療センターなどが中心です。

次に多いのは診療所で22.4%を占めており、小規模医療施設や助産所と合わせると、病院以外でも一定数の助産師が活躍していることがわかります。その他、市区町村や公務員として保健所に勤務する助産師も存在しますが、割合としては少数です。

就業場所 割合
病院 59.5%
診療所 22.4%
助産所 7.5%
市区町村 4.4%
看護師等学校養成所又は研究機関 4.0%
保健所 1.1%
訪問看護ステーション 0.3%
事業所 0.2%
社会福祉施設 0.1%
都道府県 0.1%
その他 0.5%

正規雇用の助産師は8割超え

助産師の雇用形態は正規雇用が約8割(80.2%)を占めており、残りは非正規雇用の契約職員・非常勤が19.6%(7,572人)、派遣が0.2%(76人)です。医療機関では、分娩周りの安全管理や妊産婦支援を維持するために、安定的な正規雇用での配置が中心となっています。

なお、労働者派遣法によって助産師の派遣には制限が設けられており、派遣雇用が少ないという法的な背景もあります。

雇用形態 割合(人数)
正規雇用 80.2%(31,073人)
非正規雇用 19.6%(7,572人)
派遣 0.2%(76人)

20代後半の割合が1番高い

助産師の年齢構成を見ると、25〜29歳が6,115人(15.8%)で最も多く、20代後半の世代が現場で活躍していることがわかります。次いで30〜34歳が4,843人(12.5%)、35〜39歳が4,451人(11.5%)と続き、若年層から中堅層まで幅広く勤務しています。

25歳未満は2,316人(6.0%)と比較的少ないですが、これは資格取得直後の助産師数が限られるためです。一方、40代〜50代も12%前後の比率で安定しており、経験豊富な助産師が現場に存在していることが読み取れます。

60代以上は比較的少なく、60〜64歳が2,142人(5.5%)、65歳以上で1,785人(4.6%)です。この統計から、助産師は若手が中心に活躍しつつ、中堅・ベテラン層もバランス良く配置されている職種であると判断できます。

年齢 実人員(割合)
25歳未満 2,316人(6.0%)
25~29歳 6,115人(15.8%)
30~34歳 4,843人(12.5%)
35~39歳 4,451人(11.5%)
40~44歳 4,745人(12.3%)
45~49歳 4,655人(12.0%)
50~54歳 4,272人(11.0%)
55~59歳 3,397人(8.8%)
60~64歳 2,142人(5.5%)
65歳以上 1,785人(4.6%)

2.助産師の人手不足の現状

近年では、周産期医療の現場で人材確保が課題となっています。特に、地方や小規模医療施設では助産師の偏在が目立ち、妊産婦・新生児への適切なケアの提供に影響を及ぼす可能性があります。ここでは、助産師の人手不足の現状について詳しく解説します。

少子化・晩婚化で地域差がある

近年の少子化や晩婚化の進行により、妊婦・出産の分布に地域差が生じています。出産の場や助産師の勤務先は都市部に集中する反面、地方では出生数の減少によって分娩機能そのものを廃止する医療機関もあり、助産師が長く働き続けることが難しくなっています。

その結果、都市部では一定数の助産師が集まっているものの、出産件数や高度化する支援ニーズに対して十分とはいえず、人手不足の状態が続いています。一方、地方では出産数が少なくても地域医療として分娩体制を維持する必要があるため、限られた人員・医療資源で対応せざるを得ず、助産師の確保が難しい状態です。

また、晩婚化の進行で妊娠・出産に対する支援の内容はより複雑化しており、助産師には高度な知識や経験に基づいた判断が求められる場面が増えています。そのため、助産師の人数自体は増加傾向にあっても、必要とされる専門性や配置の条件に合致する人材が不足しやすくなっています。

このように、少子化は単に出産数が減ることによる「需要の縮小」ではなく、地域間の偏在や役割の高度化を通じて、助産師不足を生み出しているのが大きな課題です。地域ごとの実情に応じた人材配置や専門性を生かせる体制づくりが、今後ますます重要になっています。

地域格差で人手不足が深刻な都道府県

厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」によると、助産師の「人口10万対就業助産師数」は全国平均で31.3人ですが、都道府県別で大きな差があります。

例えば、島根県51.4人、長野県42.7人、鹿児島県42.6人、鳥取県42.4人、徳島県41.0人と、多い地域では全国平均を大きく上回っています。

一方、埼玉県22.6人、愛媛県24.3人、千葉県25.6人、神奈川県・茨城県・広島県27.5人、青森県28.4人と、少ない地域では平均を大きく下回り、助産師の人手不足が深刻化している状況です。

この格差には、都市部での人口に対する助産師の不足、各地域の分娩件数など複数の要因が影響している可能性があります。

区分 人口10万対就業助産師数
全国 31.3人

【人口10万対就業助産師数が多い都道府県5つ】

都道府県 人口10万対就業助産師数
島根 51.4人
長野 42.7人
鹿児島 42.6人
鳥取 42.4人
徳島 41.0人

【人口10万対就業助産師数が少ない都道府県5つ】

都道府県 人口10万対就業助産師数
埼玉 22.6人
愛媛 24.3人
千葉 25.6人
神奈川、茨城、広島 27.5人
青森 28.4人

高齢初産婦・ハイリスク妊産婦の増加

厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、第1子出産時の母の平均年齢は年々上昇傾向にあり、35~39歳や40~44歳の母からの出生数は依然として多く、出産年齢の高齢化が続いています。

つまり、晩婚化・晩産化の影響に加え、高齢初産婦やハイリスク妊産婦の増加で、より高度な専門性を持つ助産師の需要が高まっています。

そのような状況から、ハイリスク妊産婦に対応できる助産師の配置が不可欠となっており、施設では安全な出産管理や周産期ケアを行うために、豊富な経験と知識を持ち合わせた助産師を確保しなければなりません。

産後ケアや不妊治療などでの需要増加

助産師の業務は出産支援だけでなく、産後ケア、母乳・育児支援、不妊治療を含む分野まで広がり、年々需要が高まっています。

特に、産後ケアは国の制度として市区町村が提供を進めているため、宿泊型・デイサービス型・アウトリーチ型のすべてで助産師の配置が必要です。また、不妊治療の保険適用拡大により、生殖補助医療で助産師が関わる場面も増えています。

このように、分野横断的な支援ニーズの増加で、従来より多くの助産師が必要とされる職場が広がっている状況です。需要の拡大は将来の仕事の多様化にもつながり、助産師が活躍できる場がさらに広がる要因になっています。

約10%の離職率にあまり変動がない

日本看護協会が公表した「2022年度病院看護実態調査」によれば、看護職員(看護師・保健師・助産師・准看護師を含む)における「正規雇用看護職員の離職率」は11.8%、そのうち「新卒採用者の離職率」は10.2%と報告されています。

さらに、病床規模別に見ても、99床以下から500床以上の施設まで幅広く、離職率の水準に大きな変化は確認できず「10%前後」で高止まりしている状況です。助産師も含む看護職員の離職率が10%程度で安定しているという状況は、人手不足の要因の1つでもあります。

さまざまな改善策は講じられているものの、離職率にあまり変動がない課題は継続しているといえます。

2022年度 病床規模別・看護職員(看護師・保健師・助産師・准看護師)離職率
病床規模 正規雇用看護職員 新卒採用者 既卒採用者
全体 11.8% 10.2% 16.6%
99床以下 12.7% 13.8% 19.5%
100~199床 12.8% 12.3% 18.7%
200~299床 11.8% 10.3% 16.2%
300~399床 11.3% 10.8% 15.9%
400~499床 11.1% 10.4% 13.0%
500床以上 11.5% 9.2% 11.6%

3.看護学生が知っておきたい助産師の将来性

助産師は妊婦・出産・産後支援を担う専門職であり、医療機関だけでなく地域ケアや行政の分野でも活躍が求められています。

日本看護協会の実態調査でも、助産師の専門性を発揮する場が広がっていることが示されており、今後も多様な場所で重要性が高まる職種といえます。ここでは、看護学生のうちから把握しておきたい助産師の将来性について解説します。

助産師の需要は今後も高まっていく

助産師が担う役割は妊婦期から出産、産後まで幅広く、近年はケアの領域がさらに多様化しています。

日本看護協会「助産師の専門性発揮のあり方に関する実態調査報告書」では、助産師が妊産期の健康相談、分娩介助、産後の支援、母乳・育児の相談、妊産婦に対する継続的なケアなど、多くの場面で重要な専門職として関わっていることが示されています。

また、厚生労働省が公表している「妊娠・出産・産後における助産師によるケア」では、助産師の就業場所が過去20年で広がっており、医療機関だけでなく母子保健や福祉に関する事業との連携、産後ケア事業の実施でも提供体制が整備されていることがわかります。

このように、医療現場・地域支援の両面で役割が拡大しており、助産師は将来的にも必要とされ続ける職種であるため、看護学生にとって安定性の高いキャリア選択の1つといえるでしょう。

専門性を高めながらキャリアの幅を広げられる

助産師は、妊産婦の健康管理や分娩の補助など、高い専門性を活かした業務に携わることができます。さらに、助産師外来・母乳外来の担当、周産期医療での高度支援、行政領域での母子保健活動など、経験を積むほどキャリアの幅を広げられるのが特徴です。

日本看護協会の調査でも、助産師外来の実施率向上や継続ケアへの参画など、施設内外で専門性を発揮できる機会が増えていることが示されています。キャリア形成の選択肢が多く、知識・技術を磨きながら長期的にステップアップできるのが大きな魅力です。

専門スキルを活かしたキャリアアップを図れる

助産師は、妊婦期から産後まで一貫して女性とその家族を支える専門職であり、経験を重ねるほど携われる領域が広がるのが特徴です。

特に、日本看護協会が示す「助産実践能力習熟段階(クリニカルラダー)」は、助産師が身に付けるべき実践能力を段階的に示した指標であり、自身の到達度を確認しながら能力の向上を図れる仕組みとして全国で普及しています。

このクリニカルラダーを活用すれば、助産師は必要な能力・知識・実践項目を明確に把握したうえで、計画的にスキルを伸ばしていけます。

また、能力の習熟度に応じて妊産婦支援の中心的役割を担うケースや、自治体の母子保健、産後ケア事業、教育分野など活躍できる領域も増えており、助産師は専門性を強みにキャリアの幅を大きく広げられる職種といえます。

ライフステージに合わせた働き方ができる

助産師は、病院勤務・診療所勤務・助産所勤務など、多様な働き方が選べるため、生活環境に応じて勤務形態を調整しやすいです。夜勤の有無や勤務時間帯を選べる職場も増えており、家庭やプライベートとの両立がしやすくなっています。

実際に「看護職員確保対策特別事業」などを通じて、教育体制の充実や就業規則の見直しが進められており、助産師自身が計画的にスキルを伸ばしながら働ける環境が整いつつあります。

さらに、アドバンス助産師制度や「助産実践能力習熟段階(クリニカルラダー)」を活用することで、専門性を可視化し、ライフステージに応じたキャリア形成にもつなげられます。

4.まとめ

助産師は全国的に人数が増加傾向にあり、令和6年時点で38,721人が就業しています。病院勤務が約6割、正規雇用が8割超えと安定した就業環境が整っており、20代後半を中心とした若手世代も活躍しています。

一方、少子化や晩婚化、地域格差、高齢出産・ハイリスク妊産婦への対応などの影響で、人手不足は一部地域で依然として深刻です。産後ケアや不妊治療などの需要も増加しており、今後も助産師の必要性は高まる見込みとなっています。

助産師としての進路を考える際には、勤務先や地域、専門分野、キャリアの選択肢を踏まえて計画的に学びと経験を積んでいきましょう。働き方をイメージするなら、まずはマイナビ看護学生に登録し、説明会・セミナーへの参加や病院検索を行ってみるのがおすすめです。