ナーストピックス

Topic. 26

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「生活の中にある医療」を支える、
きらきら訪問ナースの挑戦!

地域医療や在宅医療に興味があっても、
「新卒では難しそうだから、まずは病院から」と考える看護学生は少なくないでしょう。
しかし、訪問看護のニーズが高まっている今、
積極的に新卒看護師を採用・育成する訪問看護ステーションも増え始めています。

ここでは、ケアプロ訪問看護ステーション東京(中野区・足立区)に入職して
1年目の豊田美和子さんに「新卒で訪問看護」を選んだ理由や仕事の様子について、
教育担当者お二人に看護師育成にかける思いや教育制度について、それぞれ伺いました。

お話を伺った方々

豊田美和子さん
(ケアプロ訪問看護ステーション東京 看護師)

岡田理沙さん
(ケアプロ訪問看護ステーション東京 在宅医療事業部 看護室室長)

金坂宇将さん
(ケアプロ訪問看護ステーション東京 ケアプロ在宅支援センター東京 在宅医療事業部 事業部長)

医療的ケア児を出産後、編集者から看護師へ転身

私は2人の子どもを育てながら医学系出版社で薬学分野の雑誌編集者として働いていましたが、3人目に授かった子どもがいわゆる医療的ケア児でした。病院の医療ソーシャルワーカーや他の医療的ケア児の親からは「その状況で働いているママなんていない」と言われてしまったのですが、担当の訪問看護師の方が「絶対に復帰させてあげるから!」と力強くサポートしてくださったおかげで、育児と仕事の両立を実現することができました。

しかし、そうして働いているうちに、医療的ケア児の親の就労に関してサポート体制の整備が追い付いていないこと、地域で医療的なケアを必要としている人がたくさんいることを実感し、「私もそうした人たちを支えられる存在になりたい」と思うようになりました。そして、聖路加国際大学が看護学部看護学科に学士3年次編入できるコースを開設(2017年)したと知り、大学既卒者なら最短2年で正看護師になれる(国家試験の合格が前提)ということで、この道に賭けてみようと思ったのです。

学士3年次編入のクラスは1学年30人と少人数で、看護の基礎・専門科目を並行して学びつつ、座学を終えた領域については期間を置かず実習に入るという濃密な2年間が始まりました。実習時は学校や病院の近くにあるホテルに宿泊し、夜中まで記録を書き続けたこともあったほどハードな生活でしたが、家族のサポートもあって乗り切れたことをとても感謝しています。30人のクラスメイトはまさに「戦友」で、苦しいときは支え合い、楽しいときは笑い合う関係性を築くことができました。注射などの演習があるとき、皆で物品を持ち寄って放課後に集合し、わずかな時間で集中的に練習したのも良い思い出です。

編集者から看護師へ転身した豊田さん

「新卒で大丈夫?」の不安を払拭してくれたのは…

わが子が週7日、訪問看護のお世話になっていることもあり、卒業後は私も訪問看護師として活躍するキャリアを思い描いていました。ところが、誰に相談しても「病院で経験を積んでからのほうがいい」とアドバイスされることがほとんど。「やっぱり新卒では難しいのかな?」と悩みましたが、あきらめきれずに情報収集を重ねたところ、大学の先生からケアプロのことを教えていただきました。

思い返してみれば、聖路加国際大学とケアプロは「きらきら訪問ナース研究会」を共同で運営している関係で、私も新卒訪問看護師の育成・普及に関するイベントに参加したことがあったのです。また、医療的ケア児の親の会でケアプロのスタッフと出会い、「豊田さんはうちの社風に合っていると思う」と言われたことも心に残っていました。

さっそくケアプロの説明会とインターンシップに参加したところ、新卒で入職した訪問看護師とお話しする機会があり、「私がやりたいことを実践している人がやっと見つかった」と心が弾みました。新卒で訪問看護をするには確かに難しさもあると思いますが、実際にそのキャリアを歩んでいる人がいると分かり、私も後に続くことを決意。念のため、他のいくつかの訪問看護ステーションを見学しましたが、やはりケアプロを選ぶことにしました。新卒看護師を丁寧に育成してくれる会社としての姿勢はもちろん、先輩看護師たちが常に前向きな声かけをしてくれるなど職場の雰囲気が良いこと、組織がしっかりとしていて突発的な出来事にも対応しやすいことなどにも魅かれたからです。

新卒看護師を丁寧に育成する環境

少しずつステップアップできるケアプロの教育制度

入職後は、先輩方の手厚いサポートを受けながら、スモールステップで現場に慣れていくことができました。いきなり初めての利用者さんを1人で担当するようなことはなく、十分なOJT(同行訪問)の期間が設けられており、私の場合は初めての利用者さんの単独訪問が許されるまでに3か月ほどかかりました。最初は見学だけ、次はバイタルサイン測定、その次は吸引……というように、少しずつ先輩からケアを引き継いでいくイメージです。

現在は、9時に出社して朝礼ミーティングと申し送りをした後、1日3~4件の訪問を担当することが多いです。今までの訪問で特に印象に残っているのは、私がケアをしている間に嘔吐し、誤嚥性肺炎を起こしてしまった利用者さんのこと。「私のせいで危険にさらしてしまった……」と大きなショックを受けたのですが、本人もご家族も怒るどころか私を気遣い、優しい言葉をかけてくださいました。「皆さんに支えられることで一人前の看護師に近付いていけるのだなあ」と胸がいっぱいになりました。

訪問看護の世界では、3~5年ほどで一人前のレベルに到達できると聞いています。まずは、そこをめざして一生懸命に頑張ることが当面の目標です。その上で、仕事の中でほんの少しでも疑問を感じたら、そのままにせず突き詰めて考えることを大切にしたいです。キャッチした「?」を一つひとつ解決していくことがその後の成長につながることを、先輩方の後ろ姿に学ばせてもらったからです。

少しずつステップアップできるケアプロの教育制度

私の周囲にも、「訪問看護に興味はあるけれど、新卒で行くのはちょっと……」とためらっている看護学生がたくさんいました。しかし、「病気や障害を抱えても、自宅で満足できる生活を送りたい」と願う方は少なくありませんし、1人の利用者さんと長期的に関わって「生活の中にある医療」を提供することには、他では得られないようなやりがいがあるはずです。興味がある方は「新卒看護師をちゃんと育ててくれるか」という切り口から職場を探し、そのトビラをノックしてみませんか?

「きらきら訪問ナース研究会」とは?

新卒訪問看護師(=きらきら訪問ナース)のキャリア開発、人材育成の普及に向けた活動を行うため、聖路加国際大学、ケアプロ株式会社、全国訪問看護事業協会が共同で運営。2014年の発足より、きらきら訪問ナースに関する研究活動や育成者に対する支援(セミナー・講座の開講など)、きらきら訪問ナースを育成するための要件の検討などの活動を行っている。

http://kirakira-visiting-nurse.com/

教育担当者インタビュー ①

熱い思いの挑戦者を全力でサポート

当社では2013年から新卒看護師の採用をスタートさせました。それ以来、毎年2~3人を新卒採用しており、2020年末時点で累計14人に上っています。入職後は、まずは4日間かけてオリエンテーションを実施し、在宅医療の基礎や使用機器などについて詳しく説明します。また、最初の1か月間は、聖路加国際大学のシミュレーションセンターにて「オーダーメイド研修」を行い、現場ですぐ必要になる看護の技術や考え方について教えています。

2013年から新卒看護師の採用をスタート

もちろん、先輩看護師との同行訪問は欠かせません。当社が大切にしているのは、毎回の訪問に対して明確な目標を持たせ、訪問後は必ず振り返りを行うこと。「見学」「一部実施」「全部実施」といったステップを踏み、できるケアを増やしていくイメージです。在宅医療では入院期間という「区切り」がなく、幅広い年齢層の方、様々な疾患を抱えた方と長期的に関わっていくことになります。最初は状態が安定している維持期の利用者さんから始め、業務に慣れてきたら新たな知識や技術が求められる利用者さんを訪問してもらうよう調整しています。

また、フォローアップも重視しています。新人看護師については入職して数か月後に振り返りの機会を用意しますが、新卒の場合はそれに加えて「交換留職」(新卒合同研修)を行っています。月1回のペースで社内の新卒看護師が集まり、先輩看護師がファシリテーターとなって意見交換する場です。どんな利用者さんを担当しているか、何を心がけて訪問しているか、難しいと感じるのはどんなことか……。同じ立場の看護師同士で忌憚なく意見交換し、時にはファシリテーターがアドバイスすることもあります。とにかく様々な手を尽くして、熱い思いを持って訪問看護にチャレンジしてくれた新卒看護師を全力で支えたいと考えています。

熱い思いの挑戦者を全力でサポート

教育担当者インタビュー ②

先輩/後輩の垣根を越えて共に成長できる職場です!

ケアプロには、「教育する人もされる人も対等であり、共に育て合う存在である」という考えに基づいた「共育」という組織風土があります。立場が上の指導者が一方的に教えるのではなく、互いにアウトプットする中で学び合い、共に利用者さんを支えるプロフェッショナルとして議論を交わすことが重要だと考えています。そこで、若手のうちから指導側に立つことを意識付け、入職後半年~1年ほど経過したタイミングで「ベーシック教育研修」を実施しています。早期から「教える/教えられる」という両方の立場を経験させることで、「共育」の土壌を作るわけです。

また、教えられる側が「待ち」の姿勢になることなく、能動的に学ぶ意識を持つことも重要だと考えています。当社が主体的な学びを重視していることは、OJTで使う「振り返りシート」にも表れています。その日の訪問でどんな課題に取り組みたいか、何を学ぶべきかといった点を書き込む欄があり、「自分のここを見てほしい」と学ぶ側から発信できるようになっています。さらに、連絡・相談体制を整えることで、何かあったらすぐリーダー看護師に質問できる環境を作っています。小さな疑問点を見逃さず、そこから学びを深めていくことを大切にしたいからです。

互いにアウトプットする中で学び合う

ケアプロは「24時間365日絶えず質の高いサービスを提供し、利用者が求める多様な生活を実現する」というビジョンを掲げており、年末年始や土日祝日でも訪問を行っています。在宅医療を支え続けることには強い責任感が求められ、決して簡単な仕事ではありませんから、説明会などではそのことも率直にお伝えしています。一方で、大きなやりがいを得られることも事実です。基本的に医師がいない現場で活動するからこそ、臨床推論やフィジカルアセスメントの力が身に付きやすいという側面もあります。たくさんの方々の暮らしに触れながら看護師としてレベルアップできる現場ですから、ぜひファーストキャリア/セカンドキャリアの選択肢として考えていただきたいと思っています。

先輩/後輩の垣根を越えて共に成長できる職場です!