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「看護の日・看護週間」制定30周年・
ナイチンゲール生誕200周年記念イベント開催
5月12日は看護の日・Nursing now

ウェビナーイベントに4,900人が参加/日本看護協会

日本看護協会の「看護の日・看護週間」制定30周年・ナイチンゲール生誕200周年記念イベント「Nursing Now:看護の力で未来を創る」がこのほど開催されました。

新型コロナウイルス感染症の影響を受けてウェビナー開催となった本イベントでは、
看護職を含む約4,900人が視聴。
また、応募総数2,702通の中から選ばれた、
第10回「忘れられない看護エピソード」の受賞作品の表彰式も行われました。

看護の日制定から30年で、看護師の数は166万人と約2倍

開会式では田村憲久厚生労働大臣や日看協の福井トシ子会長などが挨拶しました。

田村大臣は、▽2022年度から見直される看護師の養成カリキュラム▽特定行為研修――などについて紹介。「看護師の養成では、免許取得前の教育の充実を図ります。特定行為研修では在宅や慢性期など、領域別の研修を設定します」などと話しました。

日本看護協会・福井トシ子会長

日本看護協会・福井トシ子会長

福井トシ子日看協会長は、看護の日が制定された約30年前から今日までで、看護師の数が約84万人から約166万人と2倍に増えたことに触れて「看護師の活躍の場はますます広がっている」とコメント。また、看護エピソード募集ではこれまで10回の募集を通じて総計3万通以上の応募を集めたことも紹介し、「それぞれの作品から、皆様と人生の様々な場面を共にし、より良く生きられるように、あるいは悔いなく生きられるように支えている看護職たちの姿を感じていただけることと思います」と感想を述べました。

看護師の声がけが人生の転機に、エピソードの表彰式も

第10回となる今回の「忘れられない看護エピソード」には、看護師の声がけが人生の大きな転機になった一般の人のエピソードや、現場で働く看護師が印象的と感じたエピソードなどが寄せられました。

最優秀賞に選ばれたのは、看護職部門では齋藤泰臣さんの「その声は」です。これは臨終の床にある父のもとに駆けつける途中の夫婦が、周囲の声がけに背中を押されて電車の中で電話をかけて、父と最期の会話をする風景を描いた作品です。緩和ケア病棟に勤務する筆者さんは、家族から患者への最期の声がけを後悔がないように促してきた経験から「あの場にいた誰もが看護をしていた」と描写しています。

齋藤さんは「受賞の連絡を受けた時は、ちょうど緩和ケア病棟から脳神経外科病棟に移動した時でした。やっていることは大きく変わりますが、緩和ケア病棟で学んだ苦しみを和らげることはどこでも共通。そうした力を育んで発信できる看護師になりたい」と喜びのコメントを寄せました。

一般部門の受賞作品は新田剛志さんの「今日も元気に出しています」です。筆者である新田さんは仕事のトラブルを抱えて、自分の命と引き換えに責任を取ろうとするまで思い詰めていました。そんな時にふと足を運んだのが献血バス。そこで看護師に「立派な血管ですね。すごい勢いで出ていて本当に助かります」とほめられたのをきっかけに生きる気力を取り戻します。その後、献血回数は50回を数え、骨髄ドナーとして骨髄の提供まで行いました。

新田さんは受賞にあたり「骨髄移植の退院後に新聞でエピソードの募集を見て、勢いで応募しました。受賞に驚いています。ありがとうございます」とコメントしています。

作品の講評を行う内館牧子さん

作品の講評を行う内館牧子さん

内館牧子賞は、看護職部門は久保百香さんの「ハル子ちゃんのおにぎり」、一般部門は池田幸生さんの「看護師として」が選ばれました。

池田さんは自衛隊の教官です。作品では教え子の看護師が東日本大震災の時に、小学生の我が子を説得して病院の非常招集に応じた様子を振り返って描いています。池田さんは受賞のコメントで「自衛隊にもこのように多くの看護師が活躍していることを知って欲しいという願いから応募しました」と話しました。

久保さんの作品では小児がんで入院する2歳のハル子ちゃんが登場します。抗がん剤の副作用で食欲のないハル子ちゃんになんとか食べてもらおうと努力する久保さんに、ハル子ちゃんは三角おにぎりが作れるかたずねます。作れないと答えると「教えてあげる」と。慣れない手つきでおにぎりを握る久保さんをハル子ちゃんは、天使のような笑顔でほめてくれました。

受賞後に寄せた手紙で久保さんは、自分自身が親になってから「子供が重い病気になることの苦しさ。それでも日々成長する我が子が生活できるよう、甘やかさずに育てなければいけないこと。こうしたことがどれほど大変か理解した」とした上で「私達は患者さんを支えているように思われるが、実は患者さんに勇気をもらったり学ばせていただくことが多く、それが仕事の原動力にもなっている」と話しました。

患者、看護師、看護管理者すべてにハピネスを、Nursing Now賞も発表

フローレンスナイチンゲールの生誕200年の節目に当たる今年は、看護職が持つ可能性を最大限に発揮し、人々の健康向上に寄与するために行動するNursing Nowキャンペーンが世界的に行われています。今回、これにちなんで設けられたNursing Now賞では、看護の力で人々の健康に貢献したことを実感した看護実践・経験を募集しました。

受賞者の渡邉美香さん(中央)

受賞者の渡邉美香さん(中央)

Nursing Now賞を受賞したのは渡邉美香さんの「セルフケア看護の実践によるハピネス」です。渡邉さんは、独り暮らしで心不全の急性増悪による緊急入院を繰り返している患者に対して、看護師がネガティブな感情を持っている点に着目。その看護師と患者が一緒に、患者の強みに着眼したセルフケア能力の評価指標を活用した看護実践を行うことによって、患者と看護師、看護管理者、病院経営者のすべての関係者にハピネスをもたらした事例を紹介しました。

その結果、患者は病気を理解して生活に気をつけているものの受診のタイミングがわからず重症化してから入院していることが判明。風邪かと思ったらすぐに受診するよう話し合うことで、患者にとっては早期退院による体力低下の防止、看護師にとっては患者を捉える視点の変化、管理者である渡邉さんにとっては患者が尊重される職場風土の育成というそれぞれにハピネスがもたらされました。また、病院にとっても入院期間の短縮、ベッドの有効活用につながりました。

受賞後に福井会長による講評を受けて渡邉さんは「コロナ禍において孤独になり、コンプライアンス低下や受診控えが懸念される。そうした人に対してケアを提供できる環境が大切」とコメントしました。

編集部の一言

忘れられない看護エピソードの受賞作を読んでいると、看護師の「何気ないひと言」に救われる人がどれほど多いかに驚きます。ですが、そのような何気ないひと言が言えるのは、日々、一番近くで患者さんを見続けているからこそ。患者さんに寄り添う看護師だからこそ、ふとしたひと言にも誰かを救う力があるのではないでしょうか。