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訪問看護師とは?役割や一日の流れ、求められるスキルを紹介
訪問看護師とは、病気や障がいを抱える利用者さんの自宅に訪問し、生活に寄り添いながら看護を行う専門職です。医療的ケアだけでなく、生活のサポートも行うため幅広いスキルが必要ですが、病院勤務よりも一人ひとりにじっくり向き合えるのは大きな魅力です。
本記事では、訪問看護師の仕事内容や現場で求められるスキル、将来性についてもわかりやすく解説しますので、訪問看護に興味のある看護学生の方はぜひ参考にしてください。
監修者
荒井 麻弥

昭和大学保健医療学部看護学科卒業。大学病院の集中治療室で急性期看護に従事したのち、産業保健師として労働者の健康管理やメンタルヘルス支援に携わる。離島医療や高齢者施設での勤務を経験し、急性期から慢性期、在宅支援、終末期ケアまで幅広い領域を担当。地域特性に応じた支援や多職種連携を重視し、一人ひとりの生活に合わせたケアを心がける。これまでの幅広い臨床経験をもとに、看護師や保健師を目指す方に役立つ情報を発信中。
INDEX
1. 訪問看護師とは?特別な資格は必要?
訪問看護師は、病院ではなく利用者さんの自宅に訪問し、医療ケアや生活支援を行う専門職です。まずは、訪問看護師の資格や役割、病棟看護師との違いなどについて解説します。
看護師資格以外に必須の資格はなし
訪問看護師に特別な資格は必要なく、看護師資格さえあれば新卒でも目指すことができます。とはいえ、在宅現場では一人で判断する場面も多く、まずは病院で臨床経験を積んでから挑戦するのが望ましいと考える方も少なくないでしょう。
しかし、近年は研修制度の充実などにより新卒から訪問看護を選ぶ人も増えており、実務経験がなくてもスムーズに働けるという声もあります。
なお、訪問看護師としてキャリアアップしたい方は、在宅ケア認定看護師を目指して実務経験を積みましょう。在宅ケア認定看護師になるには、通算5年以上及び在宅ケアにおける3年以上の実務、カリキュラム受講や認定審査などが必要です。
訪問看護師の役割
要介護高齢者の増加や「住み慣れた自宅で療養したい」というニーズの高まりなどによって、訪問看護の需要は確実に増えています。こうした背景の中で、訪問看護師は医療と生活をつなぐ重要な役割を担っています。
病院のように整った環境ではなくても、利用者さんが安心して自分らしい生活を送れるのは、訪問看護師の存在があるからです。本人だけでなくご家族の気持ちにも寄り添い、療養生活に伴う不安や負担を和らげることも訪問看護師の大切な役割です。
訪問看護師の勤務先
訪問看護師の勤務先で最も一般的なのが「訪問看護ステーション」です。医師の指示に基づき、在宅の利用者さんに医療や生活支援を提供する事業所で、看護師のほか保健師や助産師、理学療法士などが在籍していることもあります。
訪問看護ステーションの数は毎年増加し続けており、ニーズに伴って今後も増えていくことが予想されます。
また、訪問看護ステーション以外では、訪問看護事業を行う病院やクリニックで働くという選択肢もあります
【出典】一般社団法人全国訪問看護事業協会「令和6年度 訪問看護ステーション数 調査結果」
訪問看護師と病棟看護師の違い
訪問看護師と病棟看護師は、勤務先以外にも多くの違いがあります。
まず、訪問看護師は幅広い診療科に対応できる知識と、一人で判断する力が必要です。使用できる医療機器も限られるので、生活環境に合わせた工夫が求められます。また、基本的に夜勤はないことが多いですが、オンコールに対応しているケースもあります。
一方、病棟看護師は特定診療科に沿って、チームで協力しながら多くの患者さんを看護します。24時間体制で入院利用者さんをケアするため、日勤だけでなく交代制の夜勤があるのが特徴です。
訪問看護師と病棟看護師の違い
訪問看護師と訪問介護員の大きな違いは、医療行為を行えるかどうかです。
看護師資格を持つ訪問看護師は、医師の指示に基づき「注射、採血、点滴、導尿、カテーテル管理、人工呼吸器管理」などの医療行為を行うことができます。
一方、訪問介護員はホームヘルパーとも呼ばれ、「食事・入浴・排泄の介助」「通院・外出時の付き添い」「洗濯・掃除のサポート」など日常生活の支援が主な仕事であり、訪問看護師のような医療行為は行えません。
訪問看護師にできること・できないこと
訪問看護師ができることは、「在宅における医療ケアや生活支援」です。在宅医療を希望する利用者さんをサポートすることが訪問看護師の役割であるため、利用者さんの自宅以外で看護を提供することはできません。
例外として、老人ホームやケアハウスへの訪問も認められていますが、その場合は「施設が特定施設の指定を受けていないこと」「施設の住所が居宅であること」などの条件を満たしている必要があります。
また、「自宅内で看護を提供する」という観点から、基本的に「掃除や洗濯、買い物などの家事」「病院や施設への付き添い」も行えません。
あわせて読みたい【「訪問看護ステーション」ってどんな仕事?】
2. 訪問看護師の主な仕事内容と一日の流れ
ここからは、訪問看護師が実際にどのような仕事をしているのか、具体的な例を挙げて紹介します。
訪問看護師の主な仕事内容
訪問看護師の具体的な仕事内容には次のようなものが挙げられます。
- 健康状態の観察、バイタルサイン測定
- 医師の指示に基づく医療処置(注射、点滴、褥瘡ケアなど)
- 日常生活の支援(清拭、入浴や排泄の介助、栄養管理など)
- 投薬管理、服薬指導
- リハビリ、生活機能の改善提案
- ご家族への介護方法指導、相談
- 疼痛コントロールなどの終末期ケア
- 看取り
訪問看護師は、医療的ケアだけでなく生活面の支援やご家族への指導も行わなければなりません。一人で判断を迫られる場面もあり責任が伴いますが、「自宅で過ごしたい」という利用者さんの願いをかなえられる、やりがいのある仕事です。
訪問看護師の1日の流れ
続いて、訪問看護ステーションで働く訪問看護師の1日の流れです。実際の勤務時間や仕事内容は施設によって異なりますので、一つの例として参考にしてください。
| 8:30 | 出勤・準備 | 訪問看護ステーションで申し送り、当日の訪問スケジュールや利用者の状態を確認し、必要な物品を準備する。 |
|---|---|---|
| 9:00~ 12:00 |
午前の訪問 | 利用者宅を2~3件訪問して、バイタル測定、服薬確認、医療処置、生活相談などを実施する。 |
| 12:00~ 13:00 |
休憩 | 昼食。午前中の訪問内容の記録など。 |
| 13:00~ 16:00 |
午後の訪問 | さらに2~3件を訪問する。 |
| 16:00~ 17:30 |
帰所・ 記録整理 |
訪問記録の整理や情報共有、翌日の準備などを行う。 |
| 17:30 | 退勤 | オンコールを導入している場合は、自宅で緊急連絡に備えて待機することもある。 |
訪問看護師は1日におよそ4〜5件の利用者宅を訪問し、1回あたり30分から1時間半ほどかけてケアを行うのが一般的です。
勤務形態は事業所によって異なり、中には自宅から直接利用者宅へ向かい、訪問を終えたらそのまま帰宅できる「直行直帰型」を導入しているところもあります。
3.訪問看護師のやりがい
訪問看護師は、自宅という生活の場で利用者さんをケアする特別な職業です。ここでは、訪問看護師だけが感じられる主なやりがいを3つ紹介します。
利用者さん一人ひとりにじっくり向き合える
訪問看護の現場では、利用者さんの自宅という生活の場に入るため、その人の暮らしぶりや日常のリズムを大切にしながら関わることができます。
病院での看護が「治療や回復を支える」役割を担うのに対して、訪問看護は「その人らしい生活を守る」ことに直結しています。
時間や医療機器の制約はあるものの、目の前の利用者さんにじっくり向き合い、自分の判断で最適なケアを施せるのは、訪問看護師にとって大きなやりがいの一つです。
利用者さんやご家族と長期的に関われる
訪問看護では、同じ利用者さんやご家族と継続して関わることが多いため、信頼関係を深めながら長期的にサポートすることができます。
生活の変化や体調の移り変わりを時間をかけて見守り、その人らしい生活を共に築いていけます。また、訪問看護師は利用者さんのご家族にとっても、日々の不安や介護の悩みを相談できる頼もしい存在です。
こうした継続的な関わりを通じて得られる信頼や感謝は、訪問看護師にとって特別なやりがいとなるでしょう。
利用者さんの意思を尊重しながら生活を支えられる
訪問看護では、利用者さんが望む生活スタイルを尊重しながら、必要なケアを提供できます。病院のように決められたスケジュールやルールに沿うのではなく、自宅という環境の中で、その方が「どう過ごしたいか」に寄り添えるのが訪問看護の魅力です。
「できるだけ自分で食事をしたい」「家族と一緒に過ごす時間を大切にしたい」といった希望も、訪問看護であれば叶えてあげられる可能性が高まります。
こうした利用者さんの意思を尊重し、一人ひとりに合わせた柔軟な看護を行えるのは、訪問看護師ならではのやりがいと言えます。

荒井 麻弥
訪問看護のやりがいは、ご利用者さんの「その人らしい生活」を近くで支えられることです。
病院のような限られた場ではなく、日常そのものに関わるため、小さな変化や笑顔に出会いやすく、看護の力を実感しやすい領域です。
また、ご家族との関わりも深まり、チームとして信頼を築けるのも魅力です。
「自宅で安心して過ごしたい」という願いに応える経験は、看護師としての視野を広げ、人としての成長にもつながります。やりがいを感じられる瞬間が多い分、長く続けやすい仕事だと思います。
4. 訪問看護師に求められるスキル
訪問看護師には、どのようなスキルが必要なのでしょうか。ここでは、求められる主なスキルを4つ紹介します。
信頼関係を築くコミュニケーション能力
訪問看護師にとって欠かせないのが、利用者さんやご家族との信頼関係を築くためのコミュニケーション力です。訪問看護では一人の利用者さんと深く長く関わることが多いため、安心感を与えたり、わかりやすく説明したりする力がより重要となります。
ちょっとした声かけや表情の変化に気づいて寄り添うことで、信頼が積み重なり、より円滑で質の高い在宅ケアが実現できるでしょう。
利用者さんの状態を的確に把握する観察力
訪問看護では、利用者さんの「今」を的確につかむ観察力が特に求められます。病院のように多くの人の目で見守れるわけではないので、わずかな変化を見逃さず判断につなげる力が重要です。
利用者さんの「呼吸パターン、体重やむくみ、嚥下、排泄状態」など身体サインはもちろん、「床の段差、手すりの有無、室温や照明」などの住環境、「酸素チューブの接続、薬の飲み残し」など機器と服薬の管理も行わなければなりません。
また、ご家族の表情や会話から困りごとを読み取り、支援調整が必要かどうかを見極めることも必要です。
状況に応じて柔軟に対応する適応力
利用者のご自宅は、必ずしも病院のように療養に適した環境とは限りません。そのため、状況に応じて介助方法を変えたり、代替手段を考えたりすることが、在宅療養の質を守る上で欠かせないスキルです。
例えば、住居の広さや導線に合わせて使用する機器を選択したり、利用者さんやご家族の状態を見て入院を勧めたりすることもあります。
また、万が一吸引器が故障した場合は、手動吸引器などの代替機器で喀痰の貯留による呼吸障害を防ぎながら、速やかに医師へつなぐといった冷静な対応力が必要です。
主体性を持ち学び続ける学習意欲
訪問看護では医療機器や薬の管理、生活環境に応じたケア方法が多様であり、一人で訪問する場合は、先輩や同僚がその場で間違いを指摘してくれることもありません。そのため、最新の在宅ケアに関するノウハウを、常に自分自身でアップデートしていく必要があります。
また、利用者さんやご家族の希望に応じて柔軟な対応をするためには、自分の経験だけでなく文献や研修、他職種との情報共有を通じて知識を広げ、臨床に活かす努力が求められます。
このように、主体性を持って学び続けることは、安全かつ質の高い訪問看護を提供するために必要なスキルです。

荒井 麻弥
訪問看護では、医療的な知識に加えて「気づく力」や「柔軟さ」がとても役立ちます。限られた時間で状態を把握し、必要なケアを判断するため、観察力や優先順位を決める力が欠かせません。
また、生活背景やご家族の思いを理解し、その人に合った支援を組み立てるコミュニケーション力も重要です。
特別なスキルが必要に感じるかもしれませんが、病棟で培った看護の基礎がそのまま活かせる場でもあります。「相手に寄り添いたい」という気持ちが、何よりの強みになります。
5.訪問看護師の将来性
訪問看護師を目指す看護学生のみなさんに向けて、訪問看護ステーションや利用者数、また需要の観点から訪問看護師の将来性を解説します。
訪問看護ステーション・利用者数ともに年々増加している
以下の表は、全国訪問看護事業協会が公表している「訪問看護ステーション数」と、厚労省が公表している「訪問看護利用者数(要介護・介護保険利用)」です。
どちらも、年々増加していることがわかります。
| 訪問看護ステーション数 | 訪問看護利用者数(千人) | |
|---|---|---|
| 令和 元年 |
11,161 | 463.6 |
| 令和 2年 |
11,931 | 497.3 |
| 令和 3年 |
13,003 | 554.0 |
| 令和 4年 |
14,304 | 587.8 |
| 令和 5年 |
15,697 | 629.8 |
| 令和 6年 |
17,329 | 664.5 |
【出典】一般社団法人全国訪問看護事業協会「令和6年度 訪問看護ステーション数 調査結果」
【出典】e-Stat「統計表 02-12 介護サービス受給者数,月・年齢階級・サービス種類・要介護状態区分別(令和5年4月審査分)、(令和6年4月審査分)」
訪問看護師は今後も高い需要が予想される
訪問看護ステーションと利用者の増加に伴い、訪問看護師を志す方も増えてはいるものの、その数は十分とは言えないのが現状です。
日本看護協会などが策定した「訪問看護アクションプラン2025」では、2025年までに15万人の訪問看護師確保を目標としていましたが、実際2024年時点で訪問看護ステーションに勤務している看護師は91,022人と、6万人ほど不足しています。
高齢化が進む日本では、今後も在宅医療を必要とする人が増えることが見込まれるため、訪問看護師の需要はさらに高まると予想されます。
【出典】公益財団法人日本訪問看護財団「訪問看護の現状とこれから2025年版」
6. まとめ
訪問看護師は、利用者さんの自宅で医療や生活支援を行う専門職です。訪問看護ステーションや訪問看護部門を設けている病院・クリニックが主な勤務先であり、働き方は職場によって異なるものの、1日に数件の利用者宅を訪問するのが一般的です。
病院のような機器やサポートがない中、自分の判断でケアを行う場面も多く、さまざまなスキルが求められます。主体性が必要な分やりがいは大きく、利用者さんとじっくり関われることに大きな喜びを見出せるでしょう。
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荒井 麻弥
訪問看護の一日は、ご利用者さんの生活そのものに寄り添う時間です。病院と違って「生活の場」での看護になるため、体調の変化だけでなく、暮らし方やご家族の様子まで含めて支える役割があります。
体調に関する医療面でのサポートだけでなく、「自宅で過ごしたい」という気持ちを支えるためにできることも考えることが大切です。