ナーストピックス

Topic. 12

この記事は約7分で読めます。
看護学生にも知ってほしい、
人生会議(=アドバンス・ケア・プランニング)のこと

「第16回鳥山在宅医療連携塾」開催レポート

アドバンス・ケア・プランニング(advance care planning;ACP)とは、
「今後の治療・療養について、患者・家族と医療者・介護者が
あらかじめ話し合っておく自発的なプロセス」を意味します。
この取り組みの普及を後押しするため、厚生労働省はACPの愛称を「人生会議」とし、
毎年11月30日を「人生会議の日」と定めています(「いい看取り・看取られ」のゴロ合わせ)。
ここでは、ACPをテーマとした「第16回鳥山在宅医療連携塾」における
太田祥一先生(医療法人社団親樹会 恵泉クリニック・院長)の講演から、
看護学生にも知ってほしいことを中心にお届けします。

人生会議(=アドバンス・ケア・プランニング)

ACPは看取りだけの話じゃない

「アドバンス・ケア・プランニング」の「アドバンス」は、「あらかじめ」「前もって」という意味です。生き方や死に方の問題に限らず、自分のことについて「今後どうしていこう」と考えておくのは当たり前のことではあります。しかし、そこに第三者である医療者・介護者が関与するところに意義があり、難しさもあるわけです。

厚生労働省は「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」(平成30年3月改訂)でACPのポイントを挙げており、その中に次のようなことが書かれています。この3点が画期的であり、ACPにおいて最も大切な点だと思います。

  • 医師等の医療従事者から適切な情報の提供と説明がなされ、それに基づいて医療・ケアを受ける本人が多専門職種の医療・介護従事者から構成される医療・ケアチームと十分な話し合いを行い、本人による意思決定を基本としたうえで、人生の最終段階における医療・ケアを進めることが最も重要な原則である。
  • 本人の意思は変化しうるものであることを踏まえ、本人が自らの意思をその都度示し、伝えられるような支援が医療・ケアチームにより行われ、本人との話し合いが繰り返し行われることが重要である。
  • 本人が自らの意思を伝えられない状態になる可能性があることから、家族等の信頼できる者も含めて、本人との話し合いが繰り返し行われることが重要である。この話し合いに先立ち、本人は特定の家族等を自らの意思を推定する者として前もって定めておくことも重要である。

こうしたプロセスに私たちが関与するにあたって、どんな知識やスキルが必要でしょうか。例えば、倫理的な知識であり、予後予測ができる知識ということになるでしょう。また、本人の様子を観察するスキル、コミュニケーション能力、本人やご家族、他の医療者・介護者と協力していくチームビルディングのスキルなども求められると思います。

観察やコミュコミュニケーションといっても、簡単ではありませんよね。「本人の意思は変化しうるもの」だし、「本人が自らの意思を伝えられない状態になる可能性がある」わけで、本人やご家族との話し合いを繰り返しながら、その時点での意思を探っていかなければなりません。

ここまでしてACPを行う目的は何でしょうか。それは「もしものとき、本人が本当に望む治療やケアを受けられる可能性を高める」ことです。決して看取りについてだけの話ではないのですね。私は訪問在宅診療の初診時から「今度、どうしていきたいか」を極力確認するようにしていますが、在宅から施設へ移るとき、入院することになったときなどは、ACPに関する情報も含めて引き継ぎすることが当たり前になればいいと思います。

ACPとして話し合っておくべきことは?

具体的な話に沿って、ACPについて考えてみたいと思います。例えば、終末期における胃瘻は今、「社会の悪者」になっています。「胃瘻だけはしたくない」という方は多いですし、「胃瘻だけはさせたくない」という医療者はもっと多いです。経口摂取できなくなるほど悪い状態なのに、不自然なかたちで栄養を送り込む延命措置にすぎないのではないか、というわけですね。

個人的には、いったんやってみてダメなら途中で切り替えることもできるわけだから、そこまで「悪者」にするのはどうかと思っていますが、やったほうがいいのか、やらないほうがいいのか、心底悩んでいる本人やご家族、医療者は少なくありません。ただ、本人の意思がはっきりしていて変わらず、それを周囲も尊重しているということがACPで事前に確認できていれば、いざというときになって悩むことはないわけです。

ACPで確認しておきたい内容の例としては、以下のようなものが挙げられます。ざっくりと言えば、「長く生きることを最優先したいのか/とにかく負担が少ないほうがいいのか」「入院してもかまわないのか/自宅で過ごしたいのか」という大まかな方向性を確認できれば、第1段階としてはOKだろうと思います。

患者さんの状況

  • 家族構成や暮らしぶりはどのようなものですか?
  • 健康状態について気になる点はありますか?
  • 他にかかっている医療機関(治療内容)や介護保険サービスの利用はありますか? など

患者さんが大切にしたいこと(人生観や価値観、希望など)

  • これまでの暮らしで大切にしてきたことは何ですか?
  • 今の暮らしで、気になっていることはありますか?
  • これからどのように生きたいですか?
  • これから経験してみたいことはありますか?
  • 家族等の大切な人に伝えておきたいことは何ですか?
    (会っておきたい人、最期に食べたいもの、葬儀、お墓、財産など)
  • 最期の時間をどこで、誰と、どのように過ごしたいですか?
  • 意思決定のプロセスに参加してほしい人は誰ですか?
  • 代わりに意思決定してくれる人はいますか? など

医療及びケアについての希望

「可能な限り生命を維持したい」「痛みや苦しみを少しでも和らげたい」「できるだけ自然な形で最期を迎えたい」などの希望が考えられますが、病状等も含め状況は様々です。医療関係者より、適切な情報提供と説明がなされた上で、患者さんやそのご家族等と話し合いを重ねていくことが重要です。

(日本医師会:リーフレット「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)から考える」より)

いきなり「これからの人生をどうする?」という話をするのは重いですから、私たち医療者・介護者は本人と日ごろから、来週に何をするとか、今度の誕生日をどう祝うとか、日常的な話をもっとしておいたほうがいいのだと思います。

「人生会議」啓発ポスターは炎上したけれど……

厚生労働省が「人生会議」をアピールするため人気芸人を起用した啓発ポスターを作ったところ、患者団体などから批判を受け、自治体への発送を中止したという一件を覚えているでしょうか。コミカルな写真も影響してのことだと思いますが、「ACPの内容を誤解させかねない上に、当事者への配慮を欠いている」といった批判もあれば、「無関心だった人の興味を引くことができる」という肯定的な意見まで様々あったようです。いろいろな声があっていいのだと思います。

このポスターでは、芸人さんのセリフのようなかたちでつらつらとテキストが書かれており、「あーあ、もっと早く/言うといたら良かった!/こうなる前に、みんな/「人生会議」しとこ」で締められています。これはまさに、そういうことだろうと私は思います。ただ、ACPについて正しく知ってもらい、それが現場で広く実践されるようになるまでには、まだまだ皆で考えるべきことが多いとも思わされました。今回の「鳥山在宅医療連携塾」も、ACPについて考えるきっかけの一つになれば幸いです。

プロフィール

鳥山在宅医療連携塾

医療法人社団親樹会 恵泉クリニック(東京都世田谷区)の太田祥一先生が主宰する、医療・介護の関係者を対象とした勉強会で、2013年12月の初回開催以来、在宅医療に関わる様々なテーマをめぐって学びを深める貴重な機会となっている。また、地域の医療・介護関係者が「顔の見える関係」を築き、より良い地域連携を実現させるための交流の場にもなっている。
http://www.keisen.or.jp/cramschool/

病院の見学会情報を探しに行く