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Topic. 18

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訪問看護の経験を生かして
一般企業へ転職

看護師としてのキャリアは、
病院で働くことだけだと思っていませんか?

新卒で訪問看護の世界に入り、そこから一般企業への転身を果たした蒔田さん。
転職を考えようと思ったきっかけは?仕事を変えて気づいたことは?など新たな境地で働く蒔田さんにお話を伺いました。

訪問看護の経験を生かして一般企業へ転職した蒔田さん

新卒で飛び込んだ訪問看護の世界

看護大学に入学する前、そして入学後もしばらくは、漠然とですが「卒業後は系列の病院で働こう」と考えていました。その考えが変わったきっかけは、3年生のときに体験した地域看護の実習。自身の疾患と向き合いながら生活する利用者さんやそれを支えるご家族を見て、「こういう場で看護に取り組んでみたい」と強く感じたのです。大学卒業後は、地方の地域医療のことを知りたいという思いもあって、岡山県の大学院で訪問看護の研究を進めながら、訪問看護師としても働き始めました。

新卒で訪問看護の世界に入ったため、まずは先輩の訪問に同行して「何事も見て学ぶ」ことから。バイタルサインの測定や腹部マッサージなどから始め、徐々にステップアップして在宅ならではのケアに慣れていきました。指導に多大な時間と労力を割いていただいた結果、ようやく一人で訪問できる力を身に付けることができたので、とても感謝しています。最初は岡山県の方言が分からず大変でしたが、少しずつ単語の意味を理解し、自分も口に出して使ってみるなど、外国語を学ぶように習得していきました。

博士前期課程修了後は東京へ戻り、あらためて訪問看護師として経験を積んでいきました。とても魅力的な仕事でやりがいは大きかったですが、一方で「より多くの人に最適なサービスを受けてもらうにはどうしたらいいのだろう」という思いも抱えるようになりました。サービスを直接提供する以外にも、自分にできることはないだろうか……。そう考えていたとき、訪問看護師として勤めていた会社から「訪問看護ステーションから本社へ移って研究開発に取り組まないか」という打診を受け、挑戦してみることにしたのです。

新卒で飛び込んだ訪問看護の世界について話す蒔田さん

AIの研究開発を通して介護業界の課題解決に挑む

それまでは考えてもみなかったキャリアでしたが、企業として新たなサービスを生み出すことでも現場の問題解決をサポートできると気付かされました。数年後、AIの研究開発の経験をある程度積んだ段階で、より業界の質向上に貢献できるようなチャレンジをしたいと考え、現在の会社へ転職。当初はケアプラン作成支援システムの研究開発に携わりましたが、医療従事者として培ってきた知見が役立つ場面も多かったと思います。ゼロからサービスを生み出すことは大変ですが、形になったときの喜びは何ものにも代えがたいです。最近では、機能開発における他社との交渉や、チームマネジメントなども担当しています。

プライベートでは、4歳と2歳、2人の母親でもあります。勤務時間は10~16時と短めにさせてもらい(※取材時点ではテレワークのため在宅勤務)、子育てと仕事を両立させることも大切にしています。勤務が不規則で休日でも夜間の電話当番があった訪問看護師時代に比べると、オン/オフの切り替えがずいぶん楽になりました。自身の裁量で仕事をコントロールしやすいことは、一般企業に勤めるメリットの一つかもしれません。

介護業界の課題解決について話す蒔田さん

自分らしい看護のあり方を模索して

訪問看護師として働いているときは、専門職として求められる役割が明確でした。利用者さんやご家族から「ありがとう」という言葉をかけていただく瞬間をはじめ、自分の存在意義を肌で感じられる場面が多く、そうした働き方が恋しくなることは正直ゼロではありません。しかし、それ以上に、今の仕事にやりがいや意義を感じています。

現在は、開発したサービスのリリースへ向けて、マーケティングに没頭しています。心血を注いで作り上げたシステムの魅力をどうすれば広く伝えられるか、認知度がアップするか、頭をひねっているところです。これまで経験したことのない仕事ではありますが、この機会に勉強して、自分の引き出しを増やしたいと考えています。

看護学生の皆さんにお伝えしたいのは、「医療現場以外にも看護の可能性は広がっている」ということ。看護学校で学んでいると、病院などで直接的に医療に携わることが唯一の進路であるかのように思いがちです。しかし、より広い視座に立てば、それ以外で利用者さんの役に立てる方法が見えてくるかもしれません。固定観念にとらわれすぎず、看護の専門性を自分なりに生かす道を探してみてはどうでしょうか。

プロフィール

株式会社ウェルモ 蒔田麻友子さん

株式会社ウェルモ
蒔田麻友子(まきたまゆこ)

岡山県の大学院で訪問看護の研究を進めながら、訪問看護師として医療現場を経験。 博士前期課程修了後、「より多くの人に医療サービスを受けてもらうには?」と訪問看護師として勤めていた会社の研究開発部門へ異動後、現在の株式会社ウェルモへ転職。現在は、自分らしい看護の在り方を模索しながら日々奮闘中。