わたしが選んだ道~現役ナースリアルキャリア報告~

vol.03
総合病院での経験から特定のケア
に興味を持ち転職

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看護師 / 12年目 篠原明子さん(仮名)の例

先輩の例から看護師のキャリアを考えてみよう!
今回は総合病院へ就職後、がん専門病院へ転職しずっと看護師として
働きつづけている篠原さんのケースを紹介します。

最初に総合病院を選んだ理由

「人に近いところでの仕事がしたい」。そう思って看護の道を選択した私ですが、学生のころは具体的な目標もないまま、就職の時期を迎えたことを覚えています。最初の就職先に選んだのは、実習先の大学病院ではなく約500床の総合病院でした。「最初は技術を身につけたい。総合病院ならそれが叶えられる」という考えと一致したことが決め手となりました。

経験から緩和ケアに興味→転職を決意

配属された外科病棟は、がんで入院している患者さんがほとんどで、手術を受ける患者さんをはじめ、化学療法・放射線療法・終末期など全科のあらゆる病期の患者さんがいました。そこで悩んだのは、「死にたい」「つらい」と涙ながらに気持ちを吐露する終末期の患者さんと、それを支える家族のケアでした。できることといえば一緒に泣くことくらいで「何もできない」と感じる日々。また、疼痛コントロールがうまくいかない患者さんと時間をかけて関わりたいと思っても、忙しくて時間がとれず葛藤することもありました。

何もできないと感じる日々

さらに、卒業後1~2年目という未熟な時期に患者さんを看取ることが多く、自分に余裕がないうえに看取りのケアも加わって、より強く「何もできない」ことを感じました。そんな経験から緩和ケアに興味がわき、「もっと何かできたのではないか? でもどうやればいい?」という疑問がふつふつとわいてきたんです。

3年目の夏に東京と静岡で開催されたセミナーに参加し、学びの場所と機会がたくさんあることを実感。北海道を離れ上京し、転職しようと決めました。

がん専門病院に転職し、現在は…

がん専門病院に転職してからは、消化器内科に5年、呼吸器内科・外科に1年勤務し経験を重ねています。認定看護師や専門看護師も活躍していて、緩和ケアの資格をとろうと考えたこともありましたが、「緩和ケアは私たちが普段やっている看護そのもの。だからこそ極めるのが難しい」という同僚の一言に納得。資格にこだわるのではなく、いろいろなアプローチで緩和ケアを勉強し続けていくことが大切だと感じました。

また海外研修に参加したことで、それまで院内に向けられていた視野が一気に広がり、さらにさまざまな分野で働く看護師と知り合う機会も増え、この年は私にとって転機の年となりました。その後、病棟を離れ臨床指導者として実習指導にもたずさわり、学生がいい看護を実践する様子を見て「私も自分でケアしたい、看護したい!」と思うようになりました。

9年目になって感じていること

最初は転職したら3~5年で次のステップへ、と思っていましたが、勉強するほど奥深さを知りあっという間に9年目になりました。

これまでずっと働いてきた舞台は「病院」。そこから感じたのは「病院は患者さんにとってアウェイだ」ということ。その視点を持っているかいないかで、患者さんとの関わり方が変わってくると思います。病院でできること&できないこと、在宅でできること&できないこと、それぞれに限界があります。

人生の最後に寄り添える看護師に

現在、病院全体で地域連携に力を入れていることもあり、在宅ケアへの興味が高まってきています。近い将来在宅看護の世界に舞台を移したいと考えているところです。どんな分野であっても「人生の最期に寄り添える看護師になりたい」という思いはこれからも変わらないです。

今は「看護師」という肩書きを持っていろいろな活動ができる時代です。ぜひみなさんも「決めたら真剣にやってみる!」これを大切にして、これから始まる看護師人生を歩んでいけるといいですね。

こっそり今だから言える話

1年目の時、12時間かけて患者さんに投与するはずの高カロリー輸液が、3時間でなくなっていたのを見つけた時には背筋が凍りました。患者さんが体の向きを変えたために滴下速度が変わってしまったことが原因でした。幸い患者さんには何もなかったのですが、その経験が教訓になり、自分が病室に行く時間に合わせて点滴を終わらせることができるようになりました。それ以来点滴の滴下合わせには絶対の自信を持っています。

篠原さんのキャリアからわかること

「将来在宅看護へ」という目標を持ち、それに向けて病棟でさまざまな経験をしようと積極的に行動している篠原さん。「まだまだ知りたいことがある」と目をキラキラさせて語ってくれました。彼女の持つ太い軸がそうさせていると思います。彼女が言った「患者さんにとって病院はアウェイ」という言葉には私も同感です。病棟勤務を続けるからこそ外の世界を理解する必要性があるのです。

周りが具体的な将来の目標を決める中で、何も決まっていないと焦る方もいるかもしれません。もしそうだとしても、篠原さんのように看護師になってから巡ってくる出会いやチャンスが今後の方向性を決めることもあります。1つひとつの経験を重ねていくこと、地道だけれどとても重要なことだと思います。

インタビュアー

高山真由子(看護師・保健師・看護ジャーナリスト)

看護短大・大学編入学を経て、早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了(ジャーナリズム修士)。病院、在宅、行政・学校・産業保健、教育機関、イベント救護など、幅広い臨床経験を持つ。並行して看護ライターとしての活動も広げ、ダンス留学、自転車ロードレース選手生活も経験。現在は医療系web編集者として、メディアの立場から看護の発展にたずさわる1児の母。

高山真由子(看護師・保健師・看護ジャーナリスト)

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