わたしが選んだ道~現役ナースリアルキャリア報告~

vol.07
CNSとして働くということ

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看護師 / 11年目 松田育美さん(仮名)の例

先輩の例から看護師のキャリアを考えてみよう!
今回はがん看護CNSとして大学病院に勤務している松田さんのケースを紹介します。

看護師3年目を迎えたとき感じた違和感

大学病院の混合内科病棟で5年間勤務をしたのち大学院に進学し、現在はがん看護CNSとして働いています。医療が発展したとはいえ、余命が伝えられる病気はがん以外あまり聞きません。たとえ余命が限られていたとしても、それまでをどのように過ごすかは自分次第。そこに看護師が関わることで、よりよい最期が迎えられるのではないか。そんな思いからがん看護に興味を持ち、就職後もその奥深さを感じながら勤務を続けていました。

しかし、3年が過ぎた頃、仕事を「こなす」ようになった自分に気づいたんです。同時に、これまで実践してきた看護が「本当にこれでよかったのだろうか」と考えるようにもなりました。成長していない自分を変えるため、また、勉強すれば看護の引き出しが増えるのではないかという期待もあり、以前から関心のあった大学院進学を決意し退職。CNSという道を選択をしたのは、「学問の追求」ではなく「実践を深める」ことをしたい、という強い思いがあったからです。自分がやりたいことを突き詰めていった先にあった答えでした。

本当にこれでよかったのだろうか…

CNSの醍醐味と必要な能力とは

大学院修了後1年間のプレCNS期間を経てCNSに認定されました。緩和ケアチームや化学療法に関わり、痛みの調整や不安の介入を行いながらCNSの役割をいかに発揮していくかを考えています。実践の分野で看護全体を考えられる役割を得られることや、全国のがん看護CNSと交流できることなど、CNSになっていなければ味わえなかった世界を日々経験しています。これはCNSとして働く大きな醍醐味です。プライベートを犠牲にすることもありますが、自分への投資、そしてCNSとしての自分へのプレッシャーと考えて日々活動しています。

CNSの存在が徐々に浸透していますが、自分のまわりがCNSを理解しているとは限りません。「CNSって何ができるの?」「どんなことしてくれるの?」と言われることもあります。そのような環境の中で働いていくには、自分をアピールしていく行動力と積極性、そして自分に何ができるかを具体的に他者へ伝える能力が必要です。また、お給料の交渉も自分次第。戦略をたてて交渉しながら勝ち取っていくものなのです。CNSとして就職しても自分が思い描く看護実践が最初からできるわけではなく、日々の実践を積み上げ、周囲とのコミュニケーションをとり、少しずつ信頼を得ることでCNS活動を広めていけると思います。たとえCNSのポジションが確立されていない環境で働くことになっても、自分次第でいくらでも活動の場をつくることができます。切り開いていく強さはCNSには必須アイテムですね。

将来の目標。そしてこれから看護師になるみなさんへ

将来は「患者さんがいる環境でいつでもどこでもベストな医療が受けられる体制を整えたい」という目標があります。患者さんの生活に寄り添った看護をしていきたいので、いずれは在宅・地域看護の分野に活動の場を移すことを考えています。

これから看護師になるみなさんには、まずジェネラリストとして看護の基礎をしっかりと身につけてほしいと思います。経験を積み重ねた先に「どんなナースになりたいのか」「誰に対してどんなことがしたいのか」「そのためにはどうすればいいのか」といったことが見えてきます。CNSはそれを実現させるための1つの手段。将来のビジョンをしっかりと持った上で、ジェネラリストなのかスペシャリストなのか、自分が進む道を選択していくことが大切だと思います。

将来のビジョン

こっそり今だから言える話

個室の混合病棟で勤務していた時、看護師の目が届きにくいこともあってか、患者さんが脱走してしまうことが何度かありました。

工事中でたまたま開錠していた非常口から看護師の目を盗み家に帰ってしまった女性は、「1人だと怒られると思ったから」と、夕方警備員を引き連れて帰院。点滴をしていたはずの腕にはなぜか紙袋が・・・。自己抜針するのは怖かったのでしょう。中には腕に接続されたままの点滴ボトルとルートが入っていました。

脱走理由は猫に餌をやりたかったから。そうとは知らず私は院内中を探しまわり、何かあったらどうしようと不安な時間を過ごしましたが、無事に戻ってきた姿を見た時は本当に安心しました。

松田さんのキャリアからわかること

CNS誕生から10年が過ぎ、その数は450人を超えました。彼女たちの年齢やバックグラウンドが様々であれば活動の場も様々です。「与えられた仕事をすればいい」ではなく、自身で開拓していくところがやりがいでもあり苦労でもあるのでしょう。それを承知で学び続ける姿は同じ看護師として応援したいですね。結果を数値化しにくい看護実践の中で「CNSが関わることをいかに診療報酬に結びつけていくかが今後の課題」と話す松田さんからは、CNSとしての誇りと看護への熱い思いを感じました。

インタビュアー

高山真由子(看護師・保健師・看護ジャーナリスト)

看護短大・大学編入学を経て、早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了(ジャーナリズム修士)。病院、在宅、行政・学校・産業保健、教育機関、イベント救護など、幅広い臨床経験を持つ。並行して看護ライターとしての活動も広げ、ダンス留学、自転車ロードレース選手生活も経験。現在は医療系web編集者として、メディアの立場から看護の発展にたずさわる1児の母。

高山真由子(看護師・保健師・看護ジャーナリスト)

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