わたしが選んだ道~現役ナースリアルキャリア報告~

vol.04
アメリカへ留学

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ロサンゼルス留学中 / 30歳 豊島真理さん(仮名)の例

先輩の例から看護師のキャリアを考えてみよう!
今回はアメリカ留学中の豊島さんのケースを紹介します。

アメリカで公衆衛生を学ぶ!という夢をかなえる

ロサンゼルスで過ごす3度目の夏が始まりました。高校生の頃から「海外留学」という夢を持ち続けてきた私が留学について具体的に考え始めたのは、「アメリカの大学院で公衆衛生を学びたい!」という思いがきっかけでした。循環器呼吸器外科を中心とした混合病棟で勤務していた際、病気が進行した状態で入院してくる患者さん、術後の副作用に苦しむ患者さんと接するうちに、予防の段階からアプローチできないだろうかと思うようになりました。そこでたどりついたのが、公衆衛生を看護の視点から深めたいということ。公衆衛生の研究が進んでいるアメリカの大学院を目標にしました。

いざアメリカへ。語学勉強。そしてNCLEX-RNに合格!!

病院勤務しながらエージェントを介して留学準備を進め、いよいよ職場を退職する日、上司や仲間があたたかく送り出してくれたことにとても感謝しています。

留学1年目は語学学校と日本人向けの看護の予備校に通い、1日のほとんどを英語の勉強に費やしました。まさに英語漬け。英語のベースがなかった私はとにかく英語に慣れようと必死でしたね。3日に1度は電子辞書の電池を交換しないと間に合わないくらい辞書を使いました。日常会話ができるようになれば次はTOEFLや授業、と英語にゴールはありません。

NCLEX-RN絶対合格!

でも、毎日コツコツ英語の勉強を積み重ねていくことで必ず乗り越えられると思っています。
昨年、留学中の目標の1つであったNCLEX-RN(アメリカの看護師国家試験)に合格した時は本当にうれしかったです!

生活面では住宅環境に恵まれずすぐに引っ越すことになったり、バスを間違え道に迷ったりといった経験もしました。つらくなって日本に帰りたいと思ったこともありましたが、今ではすべてがいい思い出です。また、様々な文化背景・生活スタイルを持った人たちと生活することで、お互いが歩み寄って理解し合う大切さも学んでいます。

今後は大学院への入学を目指しています

NCLEX-RN受験まではこれまでにないくらい集中して勉強した時期だったと思います。おかげで試験翌日は寝込みましたね。無事合格したものの、実際にアメリカで働くにはさまざまな壁があります。特に外国人への対応は年々厳しくなっています。アメリカをはじめ海外の看護師免許取得を考えている場合、それをどうキャリアにつなげていくのか、しっかりと見極めておくことが必要だと感じています。

今は大学院入学に向けて準備を進めているところです。最初の関心は公衆衛生でしたが、より専門的な知識や技術、コミュニティに身を置けるNP(ナースプラクティショナー)にも魅力を感じ、今は両方を考えながら進んでいます。その先はアメリカに残って働きたいですね。ロサンゼルスの病院で活躍する日本人ナースも多いので、いい刺激になります。目標達成の最初のステップとして、病院でのボランティア活動を始め、現在はERで活動しています。また、大学院入学条件に必要な数学・化学などの単位をとるために、この夏からカレッジに通い始めます。自分の人生をかけたいと思える目標なので、たとえ時間がかかっても実現させたいですね。

大学院入学へ向けて!

一度きりの人生、しっかり貯蓄をして、いろんなことにチャレンジして、その過程を楽しんでほしいと思います。誰もが平等にチャンスがあると信じて現状に留まらず進んでいってください。

こっそり今だから言える話

渡米後最初の数カ月は、英語の生活に慣れることに必死だったことを思うと、日本にいる間にできる限り英語に触れて準備をしておくべきだったと痛感しました。

留学準備にエージェントを活用する人もいますが、なかには看護師が英語を不得意としていることに目をつけて、内容にそぐわない多額の資金を強いるところもあります。何でも言われたことを鵜呑みにせず、自分で確かめ、納得できるものであることを確認しておくことが留学生活の時間とお金の使い方、そして結果を左右すると思います。

一方で、全てが整いすぎている日本では想像もできないくらいさまざまな苦難もあります。アメリカの看護師国家試験に合格すればアメリカで働けるのだと、間違った理解をしている人がいますが、私の友人の多くは、国家試験に受かり、TOEFLやIELTSなどの英語の基準点を超えても、移民法の制限が強く労働ビザが発行されず、経済的にアメリカ生活が厳しくなり帰国を迫られ、泣く泣く帰っているの現状があります。

それでも人生目標の中に「海外」が焦点になっているとするならば、誰もが自分を信じればチャンスがあると思うので、留まらず進んでいってほしいです。

豊島さんのキャリアからわかること

海外で生活する、それだけでもとても大変なことなのに、大学院入学・就労を目指してチャレンジし続ける姿を見ていると、可能性は自分次第でいくらでも広がっていくんだなと感じます。「英語ができないから」と尻込みするのではなく、チャンスは誰にでも平等にあります。「やりたい!」という彼女の強い信念は、周りをも動かす力を持っているのでしょう。

最近、ナースの留学は決して珍しいことではなくなってきました。「1度は海外の看護を見てみたい、経験したい」とすでに留学を視野に入れたキャリアパスを考えている方もいるでしょう。学生ですでに海外研修等に参加した方もいるかもしれません。しかし豊島さんも言っているように、「海外留学したからそれでOK」ではありません。その経験を自身のキャリアの中にどう活かしていくのかということまで考えて計画・行動することが必要なようです。今のうちから諸外国の医療体制や外国人の受入れ体制など、動向を少しずつチェックして具体的なイメージを描いていけるといいですね。

インタビュアー

高山真由子(看護師・保健師・看護ジャーナリスト)

看護短大・大学編入学を経て、早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了(ジャーナリズム修士)。病院、在宅、行政・学校・産業保健、教育機関、イベント救護など、幅広い臨床経験を持つ。並行して看護ライターとしての活動も広げ、ダンス留学、自転車ロードレース選手生活も経験。現在は医療系web編集者として、メディアの立場から看護の発展にたずさわる1児の母。

高山真由子(看護師・保健師・看護ジャーナリスト)

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